研究実績の概要 |
本研究では、うつ病やストレスの深刻な転帰である「自殺」の早期発見・予防・創薬のためのバイオマーカー確立や生物学的機序解明を、テロメア関連動態に着目しながら目指した。 R1年度は、バイオマーカー探索としては、気分障害患者のうち、自殺未遂歴のある群に右前頭葉のhemodynamic responseの増加がみられることを見出した。統合失調症患者や双極性障害患者の末梢血ではDNAメチル化年齢が健常者に比して加齢遅延しており、抗精神病薬や気分安定薬(特にリチウムやバルプロ酸)の影響との関連が示唆された。自殺者死後脳前頭前皮質において、CCL1, CCL8, CCL13, CCL15, CCL17, CCL19, CCL20, CXCL11, IL-10が有意に減少し、IL-16が増加していた。 機序探索としては、自殺者死後脳前頭前皮質のTERTプロモーター上のnegative Glucocorticoid receptor Response Element (nGRE)周辺の領域が有意に低メチル化していることや、マウス海馬由来神経幹細胞におけるDEX 投与後TERT遺伝子発現減少が、TERTプロモーター領域のグルココルチコイド反応部位を介して生じている可能性をChIPアッセイ等で示唆した。またストレスラットモデルの前頭葉・海馬で生じたテロメア短縮・TERT遺伝子発現低下が、escitalopramの投与により回復する事象を見出した。 前年度までの知見を含め、本成果の一部を、責任著者としてすでに11編の英文原著論文として報告し、未発表のデータについても現在、論文を準備・投稿中である。
|