研究課題/領域番号 |
17H04250
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐野 輝 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30178800)
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研究分担者 |
中村 雅之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (90332832)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有棘赤血球舞踏病 / VPS13A遺伝子 / Chorein / マイトファジー |
研究実績の概要 |
Choreinを強制発現させたHEK293細胞では、CCCPによってミトコンドリア膜電位消失刺激を与えると、対照の細胞と比較して細胞死が抑制された。一方でsiRNAを用いてchoreinをノックダウンしたHEK293細胞では対照の細胞と比較して細胞死が促進されていた。CCCP刺激後の細胞株と未刺激の細胞株を材料として、0.5%NP-40, PBSにより可溶化した上清に対してtag蛋白質の抗体を固定化したカラムで全長choreinを含む画分を回収し、SDS-PAGEで展開したところ、CCCP刺激後細胞において蛋白染色で検出される特異的バンドを見出した。このバンドをゲルから回収し、トリプシン処理後に質量分析解析を行ったところ、ある細胞骨格タンパク質を同定することに成功した。ウエスタンブロット法を用いて免疫学的に同定した蛋白質を確認し、同タンパク質の抗体を用いて逆方向性にもchoreinが免疫沈降されることを確認した。また、CCCP刺激によってchoreinは障害されたミトコンドリアに共在し、同定したchorein相互作用蛋白質とも共在率が上昇することを確認した。これらのことから、choreinは細胞骨格系のタンパク質と相互作用し、ミトコンドリアの品質保持、すなわち、マイトファジーに関与することが示唆された。また、choreinの機能喪失によって、本機構が破綻することにより細胞死を来すことが示唆された。また、これらの研究と並行して現在までに日本国内をはじめ国際的に集積した数十の有棘赤血球舞踏病家系例の患者において、VPS13A遺伝子変異、発症年齢、発症時の症状、経過における運動障害に加えてうつ病、幻覚妄想、認知症、強迫性障害や人格変化などの精神症状を網羅した精神・神経症状としての表現型のデータベースを構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ミトコンドリア膜電位消失刺激におけるchoreinの細胞死抑制を明らかにし、刺激時に相互作用するタンパク質を同定し、choreinとの共局在を明らかにしている。また、有棘赤血球舞踏病の患者データベースも順調に構築している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、choreinはマイトファジーと関連していることが示唆された。今後、マイトファジー性細胞死を阻止する方法論を開発することを目的とした細胞レベルおよびin vivoレベルでの実験を行う。ミトコンドリア障害を与えた細胞死モデルに対してchoreinの機能ドメインに対応するVPS13A-cDNAを強制発現させたレスキュー実験を行い、遺伝子治療の基礎となるデータを作成し、我々が作成した遺伝子改変ChAcモデルマウスに対する遺伝子治療へとつなぎたい。ChAc患者の表現型は、同一の変異を持つ兄弟例の間でも大きく異なり、他の遺伝子の影響を受けていることが推察されているため、ChAc患者あるいはVPS13A遺伝子の機能喪失型変異のヘテロ接合性保因者の表現型にマイトファジー細胞死関連遺伝子群の変異等が関与しないかを分子遺伝学的に検討する。気分障害や統合失調症患者についても関連の有無を検討する。
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