全ゲノム関連解析(GWAS)は統合失調症感受性遺伝子の解明に成功しつつあり、画期的な証左を創出している。しかし、既報の有意領域は、“リスク”としての関連性は「確実」であるが、因果関係にまで言及していない。本研究では、現在実施中の日本人統合失調症GWAS データ(計9000 人)を基盤とし、(1)そのトップヒットの追試を行うことで、日本人における統合失調症のリスクを同定する。また、量的形質GWAS データ(身体的形質や様々な血中濃度と関連するSNP 同定を志向したGWAS)を利用し、統合失調症との(2)遺伝的相関、(3)探索的な遺伝統計学的因果律の同定を目指したメンデリアンランダム化解析を実施し、候補となりうる「統合失調症と因果関係にある」未知の分子・パスウェイ同定を目指した解析を行っている。 (1)においては、統合失調症GWASでのトップヒットの追試を独立したサンプルで行った。約300個のSNPのタイピングを4000名の統合失調症ケースで行い、他の解析で用いられた対照者の遺伝子型の頻度との比較を行うことで、関連性を検討した上で、メタ解析を実施した。その結果、3個の遺伝子多型がゲノムワイド有意水準を下回る関連性を認めた。 (2)幾つかの身体的形質と、統合失調症の遺伝学的相関を検討した。そのうち、体型の指標であるBody Mass Index (BMI)との相関が有意なものとして同定された。すなわち、低いBMIが統合失調症のリスクと関係することが判明した。 (3)しかし、その遺伝的因果関係は、メンデリアンランダム化解析においては、統計的有意な因果関係は認めなかった。 今後も、同定しているトップヒット遺伝子多型について、追試、絞り込みを実施するとともに、様々な量的形質との遺伝的相関・因果関係解析を推進していく。
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