研究実績の概要 |
本研究では佐久保健所管内に居住する住民約1万人のうち、2014-2015年に検診を受けた1,213人を対象に、血漿中ω3系脂肪酸と大うつ病との関連を調査した。うつ病自己評価尺度(Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)及びこころとからだの質問票(Patient Health Questionnaire)を同時に行い、その結果を参考に、診療経験豊富な精神科医がDSM-Ⅳに基づき大うつ病の有無を診断した。それぞれの脂肪酸を四分位に分け、最低四分位を参照値として共変量で補正し、ロジスティック回帰分析にてオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 その結果、血漿中ω3系脂肪酸は最低四分位と比較して第2~第4四分位では、OR=0.76(95%CI 0.41-1.38)、1.19(95%CI 0.68-2.06)、0.87(95%CI 0.49-1.56)、といずれも統計的な有意差はなく、またトレンド検定でも有意な関連は認められなかった(p=0.9)。個別のω3系脂肪酸(エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸)においても特に有意差は認められなかった。 他県の住民を対象とした同様の横断研究が行われているが、こちらでは血清ω3系脂肪酸と抑うつとに負の関連が認められている(Br J Nutr 115, 672, 2016)。本研究で関連が認められなかった1つの理由としては、上記の研究では対象者の平均ω3系脂肪酸摂取量が2.5g/日に対して(Nutrients 10, 1655, 2018)、本研究では約3.0g/日(Transl Psychiatry 7, e1242, 2017)と高く、血中ω3系脂肪酸と大うつ病に関連が見られるところまでには至っていない可能が考えられた。
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