研究課題/領域番号 |
17H04254
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 與亮 北海道大学, 大学病院, 准教授 (10374232)
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研究分担者 |
小牧 裕司 公益財団法人実験動物中央研究所, ライブイメージングセンター, 室長代理 (10548499)
阿保 大介 北海道大学, 大学病院, 講師 (30399844)
加藤 扶美 北海道大学, 大学病院, 助教 (80399865)
外山 穏香 (菊池穏香) 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (80783539)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核磁気共鳴画像(MRI) / 酸素代謝 / グルコース代謝 / 水動態解析 |
研究実績の概要 |
O-17酸素ガスおよびO-17標識グルコースが高価であるため、実験動物を用いたin vivoの系の前に、まずは培養細胞を用いたin vitroの系で検討を進めた。具体的には、代表的な浮遊細胞であるJurkat細胞(ヒト急性T細胞性白血病細胞由来細胞株)をRPMI1640培地とともにプラスチックシリンジに密閉し、CO2インキュベーター内(37℃, 5% CO2)で至適の期間培養する系を確立した。この際、O-17酸素ガスあるいはO-17標識グルコース存在下、非存在下で適切にコントロール群を設定し、回収した培養液をFSE系のシークエンスで撮像し、O-17標識“代謝水”による信号変化が得られるかを確認する実験系としたが、培養期間の検討やpH変動などの課題があり、実際のMRI撮像は次年度となった。 O-17水の脳脊髄液腔内投与実験を正常のラットで行った。正常のラットの大槽穿刺を行い、マイクロカニューレを留置した状態でMRI撮像を開始し、経時的にMRI撮像を行う実験系を確立した。留置したカニューレからGd造影剤を投与することで脳脊髄液から脳実質への造影剤以降を視覚的に確認することができた。しかし、カニューレ留置の手技が安定せず、カニューレの位置が浅く造影剤投与ができなかったり、カニューレの位置が深く脳実質に刺さってしまったりしたため、O-17水の投与は数例になった。投与したO-17水は脳室内への移行が確認されたが、気泡の混入や出血などがあったため長時間のMRI撮像追跡は困難であった。一方、ヒトでの検討として、正常圧水頭症や認知症の患者を対象とした特定臨床研究としてIRBを申請した。 O-17水の静脈内投与実験として、ASLモデルマウスでの血管透過性異常などの解析を計画した。モデルマウスの調達先を確保し、MRI撮像のプロトコルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
O-17酸素ガスおよびO-17標識グルコースが高価であるため、実験動物を用いたin vivoの系で十分に実験を行うことが難しく、まずは培養細胞を用いたin vitroの系での検討を進めた。しかし、培養細胞を用いて閉鎖腔での実験系の確立する必要があったため、予備検討も含めて時間を要した。また、MRIで検出可能な濃度のO-17標識水が培養細胞で産生されるには、理論上は1週間前後の培養を要することが判明し、密閉培養系であるために乳酸などによる培養液のpH変化がMRIの信号値に影響する可能性があることも懸念された。このような検討中の課題があり、実際の実験開始が遅れている。 O-17水の脳脊髄液腔投与に関しては、大槽へのカニューレ挿入の手技が安定せず、カニューレの位置が浅く造影剤投与ができなかったり、カニューレの位置が深く脳実質に刺さってしまったりしたこと、投与したO-17水は脳室内への移行が確認されたが、気泡の混入や出血などがあったため長時間のMRI撮像追跡は困難であったことなど、安定した実験系の確立に時間を要している。これは、従来のGd造影剤での検討では生じなかった問題であり、O-17水での検討特有のものである。今後、カニューレの種類やチューブの種類を変更し、大槽へのカニューレ挿入が安定して行えるように改善を図り、正常ラットに加えて疾患モデル動物での検討を行う。 O-17水の静脈内投与実験では、モデルマウスの調達先を確保し、MRI撮像のプロトコルを作成したが、モデルマウスの調達に時間がかかり、実際のMRI撮像は次年度となった。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いたin vitroの系での検討として、O-17酸素ガスやO-17グルコースを系内に投与し、培養細胞が消費したO-17ガスやO-17グルコースがO-17水に変換されたものをMRI撮像し、O-17標識“代謝水”による信号変化が得られるかを確認する実験を行う。 O-17水の脳脊髄液内投与に関してはカニューレの挿入方法を見直し、一定の深さでの挿入が可能になるような製品を用いて手技の安定化を図る。再現性良く挿入できる手技を確立し、正常ラットにO-17水を投与して経時的なMRI撮像を行い、脳脊髄液から脳実質へのO-17水の移行および洗い出しを解析する。ついで、疾患モデル動物でも同様の投与および解析を行い、正常ラットと疾患モデル動物での対比を行い、疾患特異的な異常を描出する手法を開発する。 また、O-17水の脳脊髄液投与に関してはヒトでの検討を行う。IRB承認後、臨床研究保険などを準備し、正常圧水頭症や認知症患者のリクルートを行ってO-17水の脳脊髄液腔投与を行う。投与後に経時的にMRI撮像を行い、撮像されたMRIデータは経時的な位置変動を補正するためにレジストレーションを行い、信号変化の差分からO-17濃度変化を算出す。脳脊髄液や脳実質のO-17の濃度変化を算出し、疾患別のO-17水動態の変化を解析する手法を開発する。その際、外部標準として頭部コイル内に既知の濃度のO-17水を入れたシリンジを配置し、濃度校正を行う。 O-17水をASLモデルマウスに投与し、血管透過性を含めた血流・水代謝異常などの解析を行う。大腿静脈にカニューレを留置した状態でMRI撮像を開始し、カニューレからO-17水を投与して連続的なMRI撮像を行う。脳や脊髄での信号変化からO-17水濃度を算定し、コントロールとの対比を行うことで、疾患特異的な異常を見いだす。
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