研究課題/領域番号 |
17H04256
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福光 延吉 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40277075)
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研究分担者 |
土谷 邦彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 大洗研究開発センター 材料試験炉部, 課長 (50343926)
鈴木 喜貴 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 大洗研究開発センター 材料試験炉部, 研究職 (70766857)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | テクネチウム / モリブデン / アルミナ / メソポーラス / 国産化 |
研究実績の概要 |
99mTcの国産化を推進するためには、Mo吸着剤の数百倍の吸着能を持った素材が必要となる。われわれは既存の吸着剤の表面積を増やすことで吸着能をあげられないか、メソポーラス加工を応用することで研究を続けてきた。これまでの研究ですでにメソポーラスアルミナを試作し、高い表面積を持たせることができるが焼成温度を上げると結晶構造を保ちづらいという欠点も指摘されてきた。平成29年度は、より安定した高い表面積をもたせたアルミナができないか研究した。 1つはメソポーラスシリカアルミナ複合体である。平成28年度の試作の段階でメソポーラスアルミナが焼成温度によっては結晶構造が崩れてしまうことが判明したために、それを補うためにメソポーラスシリカでしっかりとした結晶構造を作ってその表面にアルミナを付着させるような構造物を生成した。 アルミナとシリカとの比率や焼成温度を変えることで生成される構造が違うことが明らかになり、いくつかの条件で試した結果、アルミナとシリカとの比率0.6、焼成温度750度で最も高いMo吸着能を示すことが明らかになった。また、生成する際のpHによっても吸着能が異なり、酸性pH3で最も吸着能が上がることが明らかになった。 もう1つの方法は、生成する前にグリセオールを用いてエタノール処理をすることで表面をざらつかせることである。この方法ではは焼成時間が長くなるにつれ生成物は小さく表面のざらつきも大きくなってきて48時間まで焼成すると構造が少し壊れかかってくることが明らかになった。この時間による違いはこのような化学反応式から推測される生成物の量からも確認された。焼成温度では900℃を超えると構造が壊れかかることが明らかになった。現時点での最高のMo吸着能は24時間700℃焼成した場合で、既存の吸着剤の約6倍にまで到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは、既存の吸着材であるアルミナにメソポーラス加工を施すことを最初に試みた。その結果、既存のアルミナを上回る表面積とMo吸着能の向上を確認した。その一方で、焼成温度によっては結晶構造を維持しづらいなどの欠点も明らかになった。その結晶構造の脆弱さを補うためにメソポーラスシリカアルミナ複合体を合成した。シリカとの混合比や焼成温度を段階的に変化させ、混合比0.6、焼成温度750度で最も高いMo吸着能(16.8 mg・Mo/g)を実現させた。また、もう一つの試みとしてアルミナをエタノール処理で表面構造に変化を与えた。24時間処理、焼成温度700度で最も高いMo吸着能(56.2 mg・Mo/g)を実現させた。いずれも既存のアルミナのMo吸着能(10 mg・Mo/g)を上回る結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究成果をさらに発展させ、最初に界面活性剤を用いて可能な限り細孔径が小さく、細孔壁の厚みが薄く、それらによって高い表面積を有するアルミナ粒子の合成条件を明らかにする。つぎに、水酸基を細孔壁組成に組み入れることで表面積だけでなく物性的に高い吸着能を実現させる。第一段階としてメソポーラス技術確定、第2段階として細孔壁組成の制御、第3段階としてBiopolymer開発を視野に入れて研究する。
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