研究課題/領域番号 |
17H04258
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
上原 知也 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (10323403)
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研究分担者 |
藤井 博史 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (80218982)
中野 直子 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (90222166)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Treg抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、制御性T細胞がリンパ球の一種で放射線感受性が高いこと、放射線照射がクロスファイヤー効果により標的分子が高密度に存在する組織を効率よく殺傷しうることに注目し、我々独自が開発した腎臓への非特異的集積の少ない標識薬剤を用いた新規の放射性核種標識抗制御性T細胞抗体Fabフラグメントを用いたがん免疫内容療法薬剤を開発し、従来法の課題を克服することを計画した。昨年度は、制御性T細胞(Treg細胞)に対する抗体(抗Treg抗体)のFabフラグメントを作製し、抗Treg抗体FabフラグメントをGa-67およびCu-64 標識するための標識試薬NOTA-MVK-Malの作製を行った。また、本標識薬剤とFabフラグメントを結合させる(以下プローブと 呼ぶ)を作製し、Ga-67あるいCu-64を用いてGa-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブを作製し、従来使用していたddyマウスとがんを移植するために使用するC57BL/6マウスにける体内動態を評価した。また、Cu-64標識プローブの低分子化モデル化合物であるCu-64標識NOTA-MVK-Bzoを作製し、ラット腎臓より調製した刷子縁膜小胞を用いて酵素認識性について評価した。その結果マウス間の種差による影響は観察されず、Ga-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブのいずれにおいても、腎臓から速やかに排泄されることを認めた。したがって、Ga-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブのいずれにおいても腎刷子縁膜酵素の作用により放射性代謝物を遊離しているものと考えられた。しかし、刷子縁膜小胞を用いた検討においては、Cu-64標識プローブにおいては、放射性代謝物が観察されず、酵素による認識の低下が観察された。インビボの検討において、腎臓から速やかに排泄されていることから、現在その原因について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの成果に従い、制御性T細胞(Treg細胞)に対する抗体のFabフラグメントを作製および標識薬剤であるNOTA-MVK-Malの作製を行い、本標識薬剤とFabフラグメントを結合させる(以下プローブと 呼ぶ)を作製し、Ga-67あるいCu-64を用いてGa-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブを作製し、再現性を確認した。また、これらを、担癌マウスモデル実験で使用するマウスであるC57BL/6マウスにGa-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブを投与し腎臓への集積を確認したところ、これまで使用していたマウスであるddyマウスと同等の腎臓からのクリアランスを示したことから、担癌マウスを用いた検討が可能と考えられた。一方、腎臓からの放射活性の消失に腎臓刷子縁膜酵素の作用が関与しているかを確かめるために、腎刷子縁膜小胞を用いてCu-64標識低分子モデル化合物を評価したところ、所期に予測していた認識よりも遥かに低い結果となった。Ga-67からCu-64への核種変更により錯体の電価が変化することから、インビトロの検討においては、これらの差が影響しているのではないかと考えられ、現在その影響を検討している。このように、当初の予測とは異なり、インビボとインビボの乖離が観察され、予定とは少し異なる実験の追加が必要となったためやや遅れていると判断したが、インビボでの研究の基礎的な部分は確認できたことから、今後問題なく研究を推進できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討より、Ga-67標識プローブあるいはCu-64標識プローブのインビボにおける腎刷子縁膜酵素の作用による腎放射活性の低減と考えられる腎クラランスが観察された。しかし、インビトロにおいて、Cu-64標識プローブの腎刷子縁膜酵素の作用による認識が観察されなかったことから、次年度は、刷子縁膜酵素とのインキュベートの条件(時間や濃度など)を検討することで、酵素認識性を確認したいと考えている。一方、Cu-64による治療効果をインビボで評価するためには、高い比放射活性が必要となる。そこで、 まず比放射能が高い標識抗体の作製が容易なヨウ素-131を用いて標識抗体フラグメントを作製し、ヨウ素-131標識プローブを用いて、マウスTリンパ球に対する結合性、細胞治療に対する評価を行う。同時に肺癌細胞に対する治療効果も検討し、放射線に対する感受性の評価を行う。更に担癌モデルマウスへと展開することで研究のスピードを上げたいと考えている。
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