研究実績の概要 |
【目的】レビー小体型認知症,パーキンソン病,多系統萎縮症(MSA)患者脳内における異常蓄積物としてαシヌクレイン(α-syn)凝集体の沈着が認められる.α-syn凝集体の生体分子イメージングはこれら疾患の早期診断や病態解明に貢献すると考えられ,現在α-synイメージングプローブの開発が強く望まれている.今年度は,化合物ライブラリーを用いたスクリーニングにおいてα-syn凝集体への結合性を示したビスキノリン(BQ)誘導体を基盤として,新たなBQ誘導体(BQ-1, BQ-2)を設計・合成し,そのα-synイメージングプローブとしての基礎的性質を評価した.【方法】2種類のBQ誘導体を設計・合成した.リコンビナントα-synを用いた結合阻害実験を行った.MSA患者脳切片を用いた蛍光染色およびα-syn免疫染色を行った.また,BQ-2に関して 18F標識を行い,正常マウスを用いた体内放射能分布実験を行った.【結果・考察】結合阻害実験において,各BQ誘導体はα-synへの高い結合親和性を示した.切片染色において,蛍光染色と免疫染色の陽性部位が一致したことから,各BQ誘導体のヒト脳内α-synへの結合性が示された.また,[18F]BQ-2を放射化学的純度95%以上で合成し,体内放射能分布実験を行ったところ,[18F]BQ-2は投与早期における脳移行性を示した一方で,その後の脳内滞留性が認められた.以上より,さらなる構造最適化により,有用なα-synイメージングプローブの開発につながる可能性が示された.
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