研究課題/領域番号 |
17H04262
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上野 智弘 京都大学, 医学研究科, 助教 (10379034)
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研究分担者 |
杉本 直三 京都大学, 医学研究科, 教授 (20196752)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
福山 秀直 京都大学, 充実した健康長寿社会を築く総合医療開発リーダー育成リーディング大学院, 特任教授 (90181297)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 磁気共鳴映像法 / ヒト疾患モデル / 小型魚類 |
研究実績の概要 |
本研究では、高解像の磁気共鳴映像法(MRI)装置である14.1 T MR顕微鏡により、メダカなどの小型魚類ヒト疾患モデルを非侵襲に3次元撮像する。1個体に対し、経時的に疾患の発症から進展の過程を定量的イメージングにより多角的に可視化する。高解像度の定量的イメージングを行い、遺伝子たんぱく質レベルの知見や病理学的所見と照らし合わせることで、疾患の発生から進展過程のすべてを(ライフスパン)病理学的に追跡することを目的としている。本年度においては、ガン抑制遺伝子を変異させたガンモデルのメダカの高齢時での末梢血や腎臓や肝臓の組織標本の解析を行い、若魚でのMR顕微鏡で示唆された腎臓の異常から発展したと考えうる異常を見出した。さらに、昨年度のMR顕微鏡撮像年齢よりも高齢の個体で、MR顕微鏡のT1、T2*加重画像から、遺伝子型の違いによる腎臓以外の部位の異常を示唆する結果を得た。また、タウタンパク質を過剰発現させたメダカ(タウオパチーモデル)の行動実験の解析とウエスタンブロットや組織免疫染色の結果から、タウオパチーモデルと野生型の加齢に伴うタウタンパク質の変化として、行動様式の変化を説明できることが示唆された。さらに、糖尿病とタウオパチーの併発モデルに対し、若年齢でも高年齢でもBMIが有意に大きく、空腹時血糖値も有意に高くなる事が分かった。高年齢群の組織標本においても、異常を示唆する所見が得られた。加えて、MR顕微鏡のデジタル化のためのスペクトロメータの撮像テストを行った。新規導入のスペクトロメータによる画質の向上が確認されたが、タイミング等に修正の必要がある事がわかった。大きな個体に対応できる新たな傾斜磁場コイルの再設計を行い、部品の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、昨年度若魚の経時的なMR顕微鏡撮像により示唆されたガンモデルにおける腎臓の異常について、そのメカニズムを末梢血や腎臓や肝臓の組織標本を作成することにより、病理学的見地からの考察も行なった。この結果も踏まえ、定量的イメージングの前段階となるT1やT2*加重画像によるを用いて、初期の腎臓の異常からの病態の進行を多臓器も含め解析を行う事ができた。また、新たなヒト疾患モデルとして、タウオパチーモデルの行動解析を進める事ができた。行動解析に加え、ウエスタンブロットや組織免疫染色の手法を行う事で、加齢による行動様式の変化のメカニズムについて、タンパク質レベルの解析を開始する事が可能となった。また、糖尿病とタウオパチー併発モデルについても、ライフスパンでの初期解析を完了する事ができた。MR顕微鏡のデジタル化に向けて、スペクトロメータのテストを行い、修正を開始する事ができた。設計変更の必要があった傾斜磁場コイルの再設計を完了し、部品を作成する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
ガンモデルのメダカについて、昨年度までに得られた病理学的見地からの解析とMR顕微鏡の経時的画像からの解析の融合をさらに進める。この融合結果を踏まえて、ライフスパンに渡るガンモデルのMR顕微鏡による追跡と、その結果から推定される代表的年齢での組織学的解析により病態の進行について明らかにすることを目指す。さらに、RNAシーケンスを組み合わせることなどにより、遺伝子レベルでの解析も行う。加えて、前段階のテストを行った定量的イメージングの導入も合わせて行う。また、タウオパチーモデルの行動解析についても、実験個体数を増やし、対照実験の追加を行い、行動実験のデータの穴を埋める。さらに、ウエスタンブロットや組織免疫染色を進め、加齢による行動様式の変化のメカニズムの解明を目指す。その後、MR顕微鏡による経時的撮像を行なっていく。糖尿病とタウオパチー併発モデルについては、ライフスパンでの初期解析を踏まえて、実験の修正点を洗い出し、修正を行った上で、再度、ライフスパンでの解析を行っていく。新規導入したスペクトロメーターの修正を完了させ、MR顕微鏡のデジタル化を行っていく。また、傾斜磁場コイルの製作を完了させる。縦型の新規の送受信コイルを製作し、新規の傾斜磁場コイルと組み合わせることで、大きくなった個体にも対応できる撮像空間の確保を目指す。
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