研究課題/領域番号 |
17H04265
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
李 桃生 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50379997)
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研究分担者 |
浦田 芳重 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (30185087)
後藤 信治 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (50186889)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 癌転移 / 前転移ニッチ |
研究実績の概要 |
本年度はニカラベン投与による癌転移の抑制効果を動物個体実験で調べ、その作用機序を明らかにすることを目的とした。 肺内腫瘍形成(転移)実験モデルと自発肺内腫瘍転移実験モデルを用いて、放射線傷害(マウス胸部に5Gy局部照射)誘発性がん転移に対するニカラベン投与の抑制効果を調べた。また、マウス胸部に5Gyの局部照射後に、ニカラベン投与および対照治療を行い、治療後1,3, 7 日目に血液および肺組織を採集し、蛋白アレイおよび組織学解析による炎症性関連分子や炎症性細胞の変化を調べ、ニカラベン投与による癌転移抑制の分子・細胞機構の解明を試みた。 肺内腫瘍形成(転移)実験モデルおよび自発肺内腫瘍転移実験モデルにおいて、ニカラベン投与は放射線傷害誘発性がん転移に対する有意な抑制効果が認められた。一方、対照治療と比べ、血液中にIL-1α, IL-16, M-CSFなどの濃度が低く、肺組織内のCCL6やCXCL12などの蛋白濃度も低値を示した。また、免疫組織学解析で放射線照射後の1,3日目に肺組織内への好中球浸潤はニカラベン投与により顕著に減少していたことが明らかにした。 以上の結果から、傷害肺組織内の“炎症”的な微小環境が癌転移の促進に寄与し、ニカラベンの投与による抗炎症作用と癌転移抑制効果を動物実験で確認できた。放射線保護作用を有するニカラベンはがん患者の放射線治療副作用の軽減と癌転移の抑制を両立する治療薬になりうると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線保護作用を有するニカラベンの投与による癌転移抑制効果を明らかにし、放射線治療副作用の軽減と癌転移の抑制を両立する治療薬になりうることが実験的に証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
がん転移に関わる分子細胞の同定を試み、特にニカラベンが放射線照射の癌殺傷効果への影響と放射線照射の副作用に対する軽減効果を調べ、最適な投与量、投与方法および安全性を確認する。 また、外科手術侵襲などによるがん転移への影響およびニカラベン投与の抑制効果を調べ、ニカラベンが他の用途拡大を目指す。
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