研究課題/領域番号 |
17H04270
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 隆 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40464010)
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研究分担者 |
松田 康伸 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40334669)
窪田 正幸 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50205150)
三浦 宏平 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70733658)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵島移植 / 細胞移植 / 再生医療 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
今年度実施した研究の成果については以下の通りである。 ①ヒト移植膵組織におけるストレス蛋白の観察:慢性膵炎組織で生じたnesidioblastic changeでは、ストレス蛋白が強く発現していることを確認した。ストレス蛋白は移植組織片の生着を促進することが報告されているが、ストレス関連蛋白がnesidioblastic changeを呈した移植片の生着にも関与している可能性は高いことが裏付けられた。また、移植後のnesidioblastic changeに最も強く関与する因子については解析を継続中である。解析成果を基に、今後は特定のストレス蛋白の人為的調節による移植膵の機能改善や、移植片生着率のマーカーの同定に繋げる。 ②ヒト膵島組織におけるβ細胞分化度の検証:生体内で膵導管細胞や腺房細胞が膵島に移行する過程を検討した。nesidioblastic changeの膵島細胞への分化誘導過程を明らかにする目的で、膵β細胞誘導転写因子をRT-PCR, ウエスタン・ブロット、免疫染色で検討したが、現段階でnesidioblastic changeとβ細胞分化度との相関は明らかではない。また、インスリン分泌能・細胞増殖/成熟度を明らかにする目的で、膵成熟マーカーについても同様の解析を継続中である。 ③膵島移植モデル作成とその生着メカニズムの検証:ヒトを対象にした初年度実験の普遍性を確かめる目的で、動物モデルの解析を行った。ストレプトゾトシン(STZ)誘発膵島障害モデルでのnesidioblastic changeを確認した。動物をラットからブタに変更し、STZ 誘発膵島傷害モデルから膵島組織をコラーゲン灌流・遠心分離法で回収して 、経門脈的に同種移植した。移植膵島の生着を確認し、さらに耐糖能の改善についても確認した。膵β細胞マーカーの再現性について実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要③膵島移植モデル作成とその生着メカニズムの検証において、当初は動物種としてラットを用いた実験を予定していたが、実験を進めていく過程でブタを用いた大動物モデルに変更した。その理由は、得られたデータの解釈で、ヒトとラットの膵島移植ではあまりに違いが大きく、直接の比較検討が難しいためである。大動物では動物の管理が難しく、短期間に多くの実験を行うことは難しいという欠点がある。しかしながら、幸い、ブタを用いた予備実験は既に済んでいたため、膵島移植モデルの作成は比較的順調に進めることができた。次年度以降においても動物は主にブタを用いて行う方針とした。 そのほか研究実績の概要①、②においてはまだ実験継続中のものもあるが、おおむね結果が出そろっているため、研究計画全体としては順調な進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度では以下の実験を実施する ①膵島移植モデルの肝内リンパ球及び脂質動態の解析:本実験では、nesidioblastic changeが膵島生着率の延長にどのように寄与するのかを、免疫学的に解析する。具体的には昨年実施した動物実験モデルの結果からnesidioblastic changeが豊富な膵島細胞を分離して膵島移植を行い、レシピエント動物の肝内の制御T細胞について灌流液を回収して解析する。この際、コントロール群からも膵島細胞を分離して移植を行い、リンパ球解析を行うことでnesidioblastic changeが免疫細胞に与える影響を比較検討する。さらに、膵島移植前と後で経時的にリンパ球を回収し、比較検討する方法も実施する予定である。次に、移植後の膵島細胞生着の組織学的評価を行う目的で、マクロファージなど、拒絶に関与するエフェクター細胞の浸潤を免疫組織学的解析して、組織生着に必要な新生血管を解析する。 ②膵島移植モデルの膵島細胞培養実験:膵島細胞培養実験により膵島細胞のnesidioblastic changeを誘導することによって、昨年から本年にかけて実施した、もしくは実施予定のヒト・動物実験の解析結果との比較検討を行う。具体的には、動物実験モデルから分離したnesidioblastic changeが豊富な膵島を24-48時間培養後、ストレス関連蛋白についてウエスタン・ブロット解析を実施する。次にnesidioblastic changeに伴うストレス蛋白の調節機構を、各シグナル阻害剤(炎症 = IL-1/IL-6/COX2阻害剤; 酸化ストレス = 抗酸化剤; 細胞死 = TNF-α/カスパーゼ阻害剤; DNA修復 = ATM/ATR阻害剤)存在下でウエスタン・ブロット解析する。
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