本年度に実施した研究の成果については以下の通りである。 ①ヒト移植後膵島を用いた肝内生着過程に関する検討に関して、年度当初から実施を予定したが、海外の共同研究機関からの検体入手が困難な状況となったため、大動物実験に変更し大動物で同様の検討を行った。肝内リンパ球動態に関しては一定の傾向は見られなかったものの、移植後膵島の再生を期待して追加実験として実施したGLP-1投与モデルにおいて移植後膵島の増大傾向を認めた。また、膵島移植後の血糖値の推移についても検討を行い膵島移植後の血糖値の改善効果を認めた。 ②膵島移植モデルの肝内リンパ球及び脂質動態の解析:STZ誘発膵障害ブタからnesidioblastic changeが豊富な膵島細胞を分離して膵島移植を行い、レシピエント動物の肝灌流液中 の制御T細胞をフローサイトメトリー解析を行った。昨年度は回収されたリンパ球数が少なく解析が困難なため、採取する灌流液量を再検討するなどの対策をとり引き続き解析を継続したがやはりリンパ球数が少なく解析は困難であった。わずかに採取された検体では膵島移植前後での解析結果に変化は認められなかった。 ③ 膵島移植モデルの膵島細胞培養実験:動物実験モデルから分離したnesidioblastic changeが豊富な膵島を24-48時間培養後、ストレス関連蛋白についてウエ スタン・ブロット解析を実施し、各種増殖シグナルの阻害剤各シグナル阻害剤(炎症= IL-1/IL-6/COX2阻害剤; 酸化ストレス = 抗酸化剤; 細胞死 = TNF-α/カスパーゼ阻害剤; DNA修復 = ATM/ATR阻害剤)による検討を実施した。抗酸化剤によるストレス蛋白発現の増加は抑制されたが、その他の阻害剤による発現抑制効果は認められなかった。
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