研究課題/領域番号 |
17H04273
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
馬場 祥史 熊本大学, 医学部附属病院, 特任講師 (20599708)
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研究分担者 |
美馬 浩介 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (00546559)
澤 智裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (30284756)
吉田 直矢 熊本大学, 医学薬学研究部, その他 (60467983)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Fusobacterium / microbiome / LINE-1 / epigenetics / esophageal cancer |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、食道癌データバンクを用いて、食道癌におけるMicrobiome(ヒト微生物叢)とエピジェネティック変化(LINE-1≒ゲノム全体のメチル化)の関連を網羅的に解析し、革新的なbiomarkerを開発することである。Fusobacteriumは主に口腔内に生息するmicrobiomeの一種で、一般的には歯周病の原因菌として知られている。これまで、Fusobacterium nucleatum陽性食道癌症例は有意に予後不良であり、Fusobacterium nucleatumが食道癌の進展・浸潤に関与していることを報告している。今回、300例以上のデータバンクを用いた追加解析によってFusobacterium nucleatum 陽性食道癌症例はLINE-1メチル化レベルが有意に低いことが明らかになった。引き続きメカニズム解析を行っていく。また、Fusobacterium nucleatumが癌細胞のAutophagy (ATG-7 及び ULK-1)と関連することも明らかになっており、今後は抗がん剤感受性との関連も検証していく。 また、microbiomeと腫瘍免疫の関連にも着目しており、食道癌におけるPD-L1発現、腫瘍浸潤リンパ球に関する検証を行った。PD-L1高発現、腫瘍浸潤リンパ球が少ない症例は予後不良であることが明らかになり、Ann Surg誌に投稿し採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Fusobacterium nucleatumとautophagyの興味深い知見が得られており、今後抗がん剤感受性への影響などを更なる研究の基盤となるデータとなりうる。これまでの結果は米国癌学会American Association for Cancer Research 2018で「The relationship between Microbiome Fusobacterium Nucleatum and autophagy in esophageal cancer」として発表する予定である。さらには、Fusobacterium nucleatum感染とLINE-1メチル化レベルの関連も示されており、今後メカニズム解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)Fusobacterium nucleatumとAutophagy, 抗がん剤感受性の関連、(2)Fusobacterium nucleatum感染によりLINE-1低メチル化が引き起こされるメカニズム解析に焦点を絞り、研究推進していく。さらには、 LINE-1 メチル化レベルを制御する候補microbiome を同定するために16S rRNA シークエンスで解析する症例選択を行っており、順次解析する予定である。腫瘍部からのPowerMag Microbiome RNA / DNA Isolation Kit (MO BIO Laboratories, Inc.)を用いてDNAの抽出を行う。16S rRNA領域プライマーを設計し、MicroSeq(R)500 16S rDNA PCR Kitを用いてPCR増幅 を行う。次に、次世代シークエンサー(PRISM 3100 Genetic Analyzer)により塩基配列を決定する。データベース上でBLAST検索を実施することにより、既知の微生物の16S rDNA配列との相同性検索を行い、近縁種と推定される微生物リストを作成する。これで同定されたmicrobiome群の食道癌症例での生息・分布に関して、quantitative RT-PCRによる評価を行う予定である。
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