近年の移植医療の発展に伴い、様々な臓器保存法が次々に開発され、現在も更なる技術開発が進んでいる。一酸化炭素(CO)と酸素(O2)の混合物を使用する高圧メディカルガス保存法を用いてラットの心臓を24時間保存すると、摘出直後と同等の機能を保つ。この保存法のメカニズムを解明するため、ラットから採取した直後の心臓(コントロール群)、U W液に24時間浸漬保存した群(単純冷保存群)、高圧メディカルガス保存群のメタボローム解析を行った。 その結果、高圧メディカルガス保存群は、単純冷保存群よりも乳酸は有意に低く、クエン酸が有意に高かった。さらに、アデノシン三リン酸(ATP)、一部のペントースリン酸経路の代謝物、および還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)は、単純冷保存群よりも高圧メディカルガス保存群で有意に高かった。細胞を酸化ストレスから保護する還元型グルタチオン(GSH)も、単純冷保存群よりも高圧メディカルガス保存群で有意に高かった。これらの結果は、COおよびO2が嫌気性代謝から好気性代謝へのシフトを誘発するため、臓器のエネルギーが維持され、また、グルコース利用を解糖からペントースリン酸経路にシフトし、酸化ストレスを低減することを示した。 高圧メディカルガス保存法のCOとO2はATP供給に重要な影響を及ぼし、虚血性損傷を防ぐための酸化ストレスを減少させることが明らかとなった。高圧メディカルガス保存法は、臨床現場においても実用的であると考えられる。
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