研究課題/領域番号 |
17H04276
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
霜田 雅之 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 膵島移植プロジェクト長 (40640529)
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研究分担者 |
寺村 裕治 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (10365421)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオ人工膵島 / 1型糖尿病 / 膵島移植 / ランゲルハンス島 |
研究実績の概要 |
1型糖尿病に対する細胞治療として膵島移植が確立されつつあるが、ドナー不足が大きな問題である。加えて、移植後、一生涯免疫抑制剤を服用する必要があり、その副作用やコストが問題である。また、次世代糖尿病治療としてブタ膵島を用いてカプセル等で被覆したバイオ人工膵島が研究されているものの、移植後の免疫反応により、膵島細胞の繊維化による酸素不足による壊死が問題となっている。そこで、本研究では、生体適合性の高いポリエチレングリコール結合脂質(PEG脂質)と分岐型PEG誘導体などを用いて膵島表面をコーティングすることにより超薄層構造のコーティング化膵島の実現を目指している。両親媒性ポリマーであるPEG脂質を細胞表面にのみ導入して、そのミセル状分子を細胞表面上で、分岐型PEG誘導体と反応させることで、表層にのみ薄膜の形成が可能になった。また、その分岐型PEGの条件を変化させて、細胞膜上の安定性を検討したところ、細胞表面に形成された薄膜の安定性への影響はそれほど見られず、4分岐と8分岐の組み合わせが最適であることがわかった。移植用の糖尿病動物モデルについては、マウスモデルを確立し、ブタ膵島分離法をさらにカプセル・コーティング化に最適な膵島となるように改良を行った。高純度、被膜が保たれること、膵島細胞同士の分離が起きないこと、外分泌組織から遊離していることなどの点を改善した。in vitroにおけるインスリン分泌を確認し、さらに糖尿病免疫不全マウスの腎被膜下に移植して血糖値が改善することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年11月、細胞カプセルの安定性試験を行うに際し、カプセル化実験を行った結果、当初の想定に反し定量的な評価ができていないことが判明した。研究遂行上、この原因を見極めることが不可欠であることから、実験条件の検討を再度行い新しいカプセル化材料合成実験を追加で実施した上で、細胞カプセルの安定性試験をやり直す必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1.ブタ膵島等を新規デバイスに封入したバイオ人工膵島の作成と評価 前年度の結果を基に、ブタ膵島およびその他のインスリン産生細胞をコーティング・カプセル化し、バイオ人工膵島を作成する。In vitro評価を行い、最適化したバイオ人工膵島を作成する。 2.バイオ人工膵島の糖尿病モデルマウスへの移植 1.で最適化したバイオ人工膵島を糖尿病にしたマウスに移植する。グラフトの機能、安全性評価を行う。安全性評価項目には、細胞の毒性、腫瘍化の有無、炎症反応、免疫に及ぼす影響、細胞の遊走性、あとで移植片を除去可能かどうか、追加移植可能か、併用する薬剤の副作用、感染症の有無など多岐にわたるが、これらの検証を行う。移植後観察期間は1~3ヶ月を基本とし、短~中期的な効果と安全性を検証する。
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