本年度は、自然免疫に重要な役割を果たしているNLRP3インフラマソーム共有結合阻害剤として報告されている天然の抗炎症ハーブRabdosia rubescensの主要な生物活性成分であるオリドニン(Oridonin)を用いて、移植抗原特異的な免疫制御環境を構築する目的で、今までの研究成果を踏まえて、完全にMHCミスマッチのマウス心臓移植後の長期生存効果を検証した上、その作用機序について解析した。コントロールグループでは、B6(H2-Kb)マウスの心臓、C3H(H2-Kk)マウスに移植した。グラフトの生存期間は(n=21; Mean±SEM = 8.05±0.1 days)であった。オリドニンを用いて、投与量を3、10、15mg/kgで検討したところ、15mg/kgの投与で、最も長いグラフトの生存期間(n=8; Mean±SEM = 67.3±14.1 days; p<0.0001)が得られた。オリドニンが顕著なグラフトの生存期間延長効果を示した。同種移植片組織学の検討では、浸潤性CD8+T細胞とマクロファージが減少し、制御性T細胞(Treg)が増殖していることがわかった。 また、移植片浸潤細胞のIL-1βおよびIFN-γのmRNA発現は減弱された。一方、オリドニンin vivoでの効果の作用機序を検証するため、in vitro の実験を行なった。オリドニンで処理された骨髄由来樹状細胞(BMDC)は、アロIFN-γ+CD4+ T細胞の増殖を抑制し、TregとIL-10+CD4+T細胞の増殖を促進した。 さらに、LPS活性化BMDCにおけるNF-κBおよびIκBαのリン酸化の減弱、NLRP3、カスパーゼ-1、IL-1β、IL-18およびIFN-γタンパクレベルでの発現の減弱も確認できた。これらの研究成果は、自然免疫の制御が移植臓器の生着期間延長効果、移植免疫寛容の誘導にも重要な役割を果たしていることがわかり、新規で天然の免疫抑制剤としてのオリドニンの可能性が示唆された。
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