研究課題/領域番号 |
17H04278
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
笹田 哲朗 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がんワクチンセンター, 部長 (70293967)
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研究分担者 |
岸 裕幸 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60186210)
東 公一 久留米大学, 医学部, 講師 (00368896)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネオアンチゲン / 腫瘍免疫 / 遺伝子変異 / 免疫反応 / 免疫療法 / 個別化治療 / ゼノグラフト |
研究実績の概要 |
がん特異的遺伝子変異に由来する抗原(ネオアンチゲン)は、免疫系から“非自己”として認識され高い免疫原性を示すが、がん患者由来T細胞のネオアンチゲン特異性を効率的よく同定できるスクリーニング系は現在存在しない。本研究では、① 分子マーカーを用いて分離したT細胞からT細胞受容体(TCR)を同定することにより効率的にネオアンチゲン特異性をスクリーニングする系を開発する、② 患者由来腫瘍組織のゼノグラフトモデルを用いてネオアンチゲン特異的T細胞の抗腫瘍効果を検証する。本研究の成果は、“ネオアンチゲンを標的とした個別化がん免疫治療”を臨床応用するための知的・技術的基盤の確立に寄与すると期待される。 H30年度までの検討で得られた結果は以下のとおりである。① 大腸がん・腎臓がん組織由来の腫瘍浸潤T細胞から各種細胞表面分子発現の有無によりT細胞クローンを分離(single cell sorting)し、各クローンの発現するTCR遺伝子配列を同定・比較した。② PD-1, TIM-3, 4-1BBの3分子すべてを発現するT細胞群とPD-1のみを発現するT細胞群とを比較検討したところ、各群で高頻度に認められるTCR遺伝子配列が大きく異なることが確認された。③ PD-1, TIM-3, 4-1BBの3分子すべてを発現するT細胞クローンから同定されたTCRを遺伝子導入したT細胞株を同一患者由来ゼノグラフトモデルに移入したところ、抗腫瘍効果が確認された。現在、ネオアンチゲン反応性を確認し、TCR遺伝子配列の同定頻度とネオアンチゲン反応性の有無との相関を検証中である。④ 抗PD-1抗体で治療された非小細胞肺がん患者20例(有効例、無効例を各10例)から末梢血、腫瘍組織を採取し保存した。次年度には、これまでに確立したスクリーニング系を用いてネオアンチゲン反応性を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの検討で、① 大腸がん・腎臓がん組織由来の腫瘍浸潤T細胞を各種細胞表面分子発現の有無により群分けすると、各群で高頻度に認めるTCR遺伝子配列が大きく異なること、② PD-1, TIM-3, 4-1BBの3分子すべてを発現するT細胞に高頻度に認められるTCRを遺伝子導入したT細胞株は同一患者由来ゼノグラフトモデルにおいて抗腫瘍効果を示すこと、が確認された。さらに、抗PD-1抗体で治療された非小細胞肺がん患者20例(有効例、無効例を各10例)から末梢血、腫瘍組織を採取し、これまでに確立したスクリーニング系を検証するための準備が整った。これらの成果より、本研究は「おおむね順調に進展している」と評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、PD-1, TIM-3, 4-1BBの3分子すべてを発現するT細胞クローンから同定されたTCRを遺伝子導入したT細胞株は同一患者由来のゼノグラフトモデルで抗腫瘍効果を示すことが確認された。現在、TCR遺伝子導入T細胞株のネオアンチゲン反応性(サイトカイン分泌など)を確認し、TCR遺伝子配列の同定頻度とネオアンチゲン反応性の有無との相関を検証中である。なお、患者ごとに解析結果が異なる可能性もあるため、次年度には大腸がん・腎臓がんの検体数をさらに増やして、現在確立しているネオアンチゲンスクリーニング系の有用性を検証する計画である。 また、抗PD-1抗体で治療された非小細胞肺がん患者20例(有効例、無効例を各10例)からの末梢血・腫瘍組織の採取・保存が終了したので、次年度には、この検体を用いてネオアンチゲンスクリーニング系の検証をさらに進める計画である。
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