研究分担者 |
佐田 尚宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (20261977)
細谷 好則 自治医科大学, 医学部, 教授 (30275698)
山口 博紀 自治医科大学, 医学部, 教授 (20376445)
三木 厚 自治医科大学, 医学部, 講師 (20570378)
大澤 英之 自治医科大学, 医学部, 助教 (60458271)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
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研究実績の概要 |
タキサン腹腔内反復化学療法は胃癌腹膜播種に有効であるが、播種患者全体の予後は依然として悪く、より効果的な治療技術の開発が望まれる。本研究では、治療方針を決定する上で重要な役割を果たすと考えられる新たなバイオマーカーとして、腹腔内に存在するエクソソーム中に存在する機能分子の解析を行うことに取り組んでいる。 (1)以前より継続して行っている腹腔内液中のCEAmRNA定量値の意義に関する最終結果が得られた。 (2)腹膜播種陽性患者および陰性患者の腹水・洗浄液から超遠心法を用いてエクソソーム分画を抽出、電子顕微鏡像とナノ粒子解析装置を用いた粒子分布で確認し、解析に十分な量のタンパク、RNA量が得られることを確認したうえで、播種陽性群のみで発現が亢進しているマイクロRNA12種類、(hsa-miR-150, hsa-miR-223, hsa-miR-455-3p, hsa-miR-21, hsa-miR-4301, hsa-miR-3173-3p, hsa-miR-720, hsa-miR-1280, hsa-miR-486-5p, hsa-miR-1260, hsa-miR-342-3p, hsa-miR-4286)および播種陰性群で発現が亢進しているマイクロRNA7種類(hsa-miR-152, hsa-miR-29c, hsa-miR-29a, hsa-miR-29b, hsa-miR-20a, hsa-miR-199a-3p, hsa-miR-373*)を新たなバイオマーカーの候補分子として同定した。これらのうち、hsa-miR-223-3p, hsa-miR-21-5p, hsa-miR-486-5p, hsa-miR-342-3p, hsa-miR-4301に絞って、新たなコホート患者において定量解析を開始している。 (3)癌性腹水検体において、1~5 microg/mlの濃度で、CD9抗体を作用させたのち、磁気カラムを通過させることで、ほぼ90%のエクソソーム分画が除去されることが確認した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの網羅的解析の結果から、腹膜播種の病態と関連が深いと思われるマイクロRNAとして、hsa-miR-223-3p, hsa-miR-21-5p, hsa-miR-486-5p, hsa-miR-342-3p, hsa-miR-4301を選抜し、あらたなコホート症例で解析を行い、その臨床病理学的因子との相関を検討する。また、腹腔内化学療法症例のうち、経時的に腹腔内液を採取した例で、その推移を臨床経過、血中腫瘍マーカーの推移と比較検討し、どのマーカーが病勢を最もよく反映するか?また従来のマーカーに対する優越性を見出せるかどうかを検証する。 また、癌性腹水由来のエクソソームを各種培養細胞、免疫細胞に添加し、それらの細胞機能への影響をIn vitroの実験系で詳細に検討するとともに、マイクロRNAに特異的なinhibitorやmimic合成オリゴを対象細胞に添加し、その影響がキャンセルされるかどうか?を確認することによって、個々のマイクロRNAの分子機能を明らかにする。その結果から、これらのマイクロRNAが播種癌細胞の形質および腹腔局所の微小環境をどう制御しているのか?を明らかにし、現在進行しているエクソソームの表面分子の発現解析とあわせて、新たなCARTシステムに貢献できる可能性を探索していく方針である。
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