研究課題/領域番号 |
17H04286
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
北山 丈二 自治医科大学, 医学部, 教授 (20251308)
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研究分担者 |
佐田 尚宏 自治医科大学, 医学部, 教授 (20261977)
山口 博紀 自治医科大学, 医学部, 教授 (20376445)
三木 厚 自治医科大学, 医学部, 講師 (20570378)
細谷 好則 自治医科大学, 医学部, 教授 (30275698)
大澤 英之 自治医科大学, 医学部, 講師 (60458271)
寺谷 工 自治医科大学, 医学部, 講師 (70373404)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 腹膜播種 / エクソソーム / バイオマーカー / マイクロRNA / CART |
研究実績の概要 |
消化器癌腹膜播種に対するタキサン腹腔内反復化学療法の治療方針を決定する上で重要な役割を果たすと考えられる新たなバイオマーカーの探索の一貫として、腹腔内に存在するエクソソーム中に存在する機能分子の解析を行うとともに臨床応用できる知見を得る事を目標とする。 (1)継続中の腹腔内液中のCEAmRNA定量値の意義に関する最終結果を得た。 (2)腹膜播種陽性患者および陰性患者の腹水・洗浄液から超遠心法を用いてエクソソーム分画を抽出、電子顕微鏡像とナノ粒子解析装置を用いた粒子分布で確認し、解析に十分な量のタンパク、RNA量が得られることを確認したうえで、播種陽性群のみで発現が亢進しているマイクロRNA12種類および播種陰性群で発現が亢進しているマイクロRNA7種類を新たなバイオマーカーの候補分子として同定した。次に、51例(播種陽性12例、陰性39例)でこれらの発現をRT-PCR法にて定量し、4種類のmicroRNA (miR-21-5p, miR-92a-3p, miR-223-3p, and miR-342-3p)が播種陽性症例で有意に増加しており、陽性群でPeritoneal cancer Index (PCI) scoreと正の相関を示すことを確認した。また、腹腔内化学療法を施行した患者において、臨床経過とこれらのmicroRNAの推移を比較検討すると、miR-21-5p とmiR-223-3pが播種の病態と特に良好な相関を示し、播種治療におけるバイオマーカーとなりうると考えられた。 (3)癌性腹水検体において、1~5 microg/mlの濃度で、CD9およびCD63抗体を作用させたのち、磁気カラムを通過させることで、ほぼ90%のエクソソーム分画が除去されることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)腹膜播種陽性胃癌患者14例と陰性患者11例から開腹時に洗浄腹水を採取、超遠心法にてエクソソームを分離し、内包されるmicroRNAを単離することに成功した。このmicroRNAサンプルからを用いて網羅的な発現解析を行い、播種陽性群では56種、播種陰性群では54種のmicroRNAを同定し、これらのマイクロRNAのカスタムアレーを作成、これを用いて播種陽性群で有意に発現が亢進しているmicroRNA 8個と低下しているmicroRNA 3個を同定した。次に、51例(播種陽性12例、陰性39例)のvalidation cohortにて、これらのmicroRNAの発現をRT-PCR法にて定量し、4種類のmicroRNA (miR-21-5p, miR-92a-3p, miR-223-3p, and miR-342-3p)が播種陽性症例で有意に増加しており、陽性群でPeritoneal cancer Index (PCI) scoreと正の相関を示すことを確認した。さらに、腹腔内化学療法を施行した患者において、臨床経過とこれらのmicroRNAの推移を比較検討すると、miR-21-5p とmiR-223-3pが播種の病態と特に良好な相関を示し、播種治療におけるバイオマーカーとなりうることを示唆する知見を得た。 (2)癌性腹水検体において、二種類の抗体を様々な濃度で作用させたのち、磁気カラムを通過させ、エクソソームの除去効率を測定、最も効率的な条件を決定するという目標を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
新たなコホート群で、4種類のmicroRNA (miR-21-5p, miR-92a-3p, miR-223-3p, and miR-342-3p)の定量値と臨床病理学的因子との相関関係を検討する。また、腹腔内化学療法症例で経時的に腹腔内液を採取した例で、miR-223-3p, miR-21-5pの推移を臨床経過、血中腫瘍マーカーの推移と比較検討し、従来のマーカーに対する優越性を見出せるかどうかを検証する。 また、miR-223-3pとmiR-21-5pの分子機能を明らかにすることに取り組む。癌性腹水由来のエクソソームを各種培養細胞、免疫細胞に添加し、それらの細胞機能への影響をIn vitroの実験系で詳細に検討するとともに、特異的なinhibitorを対象細胞に添加し、その影響がキャンセルされるかどうか?を確認する。その結果から、これらのマイクロRNAが播種癌細胞の形質および腹腔局所の微小環境をどう制御しているのか?を明らかにし、現在進行しているエクソソームの表面分子の発現解析とあわせて腹膜播種に対する新たな治療戦略を見出す 新たに、現在ウイルス除去に用いられている濾過膜を用いてエクソソーム除去濃縮腹水を作成する方法を試み、抗体によるエクソソーム除去法との効率、実用性を比較検討することで最適なCARTシステムを模索する。
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