研究課題/領域番号 |
17H04291
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 義 京都大学, 医学研究科, 准教授 (40281092)
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研究分担者 |
湊谷 謙司 京都大学, 医学研究科, 教授 (20393241)
岸田 晶夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60224929)
升本 英利 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (70645754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 循環器・高血圧 / 再生医学 / バイオテクノロジー / 細胞・組織 |
研究実績の概要 |
(研究の目的)ブタなどの中動物由来血管を脱細胞化し、さらにHLAホモ健常ヒトiPS細胞から分化誘導した血管細胞(血管内皮細胞・血管壁あるいは平滑筋細胞)を再播種することにより血管グラフトを作製する。さらに動物への移植により機能および安全性の評価を行うことにより、最終的に先天性心疾患等に用いることのできる生体適合性の高い自己成長型血管グラフトを開発することを目的とする。 (研究の成果) 1.脱細胞化ゼノグラフト血管組織への血管細胞再播種による自己成長型血管グラフトの開発 本課題における高静水圧を用いた脱細胞グラフトに対する詳細な組織学的検討を行った結果、通常の化学物質を用いた脱細胞グラフト作製法と比較して、内弾性板などの血管組織独自の微細構造を高度に保つことが示された。一方で、ヒトiPS細胞由来血管内皮細胞の前段階としてのヒト臍帯静脈由来内皮細胞の播種実験においては、播種細胞数および期間を調整しても十分な播種効果を得ることが困難であった。次年度以降にコーティング剤等を含めたさらなる検討を継続する予定である。また本年度は、脱細胞異種グラフトヘの再細胞化に関して実績のあるドイツ・ハノーファー医科大学との共同研究を開始し、技術的支援を得た。 2.脱細胞化ゼノグラフト血管組織の異種動物への移植実験 本年度は動脈系への移植実験として、まずウサギ腹部大動脈置換モデルに着手したが、対麻痺の発生が多く、実験系としては不適であった。そのためミニブタ頸動脈移植モデルの確立のため、頸動脈露出・スパスム予防法を含めた実験条件の最適化を進めた。また頸動脈エコー・IVUS・血管造影などを用いた自己成長性評価法を確立した。次年度以降に移植後の細胞生着性および自己成長性に関するさらなる検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱細胞化ゼノグラフト血管組織の異種動物の動脈系への移植実験系として、ミニブタ頸動脈移植モデル作製法および自己成長性に関する評価系を確立することが出来た。またヒトiPS細胞由来血管内皮細胞を用いた再細胞化のための基礎データとして、高静水圧を用いた脱細胞グラフトの血管独自構造の高度な保持効果について組織学的に確認することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
1.脱細胞化ゼノグラフト血管組織への血管細胞再播種による自己成長型血管グラフトの開発 前年度までの研究開発において、本課題における高静水圧を用いた脱細胞グラフトは、通常の化学物質を用いた脱細胞グラフト作製法と比較して、内弾性板などの血管組織独自の微細構造を高度に保つことが示された。一方で、この独自の脱細胞グラフトに対する再細胞化においては、コーティング剤を適度に使用することが必要であることを見出した。したがって本年度においては、前年度までに作製した脱細胞化ゼノグラフトの一部(1x1cm 程度)に対する各種細胞外マトリクスタンパク(I/IV型コラーゲン・フィブロネクチン・ゼラチンなど)の最適なコーティング条件を見出し、その条件におけるヒト由来血管内皮細胞を37℃、5% CO2 下に播種・培養する。組織学的検査(H-E 染色・シリウスレッド染色・VEcadherin/PDGFRb/Calponin 免疫染色・EVG染色など)・LIVE/DEAD アッセイ・走査式電子顕微鏡観察などにより、細胞の生存率・細胞およびECM 組成につき検討し、最適条件を検索する。最適条件について、バイオリアクターを用いて血管の状態(1-2cm)にて細胞播種を行い、上記の評価項目を用いて播種効率を検討する。 2. 脱細胞化ゼノグラフト血管組織の異種動物への移植実験 前年度までに静脈系への移植としてミニブタ下大静脈-右心房バイパスモデルを確立し、移植実験を行った。本年度は動脈系への評価として、ミニブタ頸動脈移植モデルへの移植実験を行い、その細胞生着性および自己成長性を評価する。上記検討をミニブタ(クラウンなど)頸動脈の置換により行う。n=3-5程度とする。評価後に犠牲死ののちグラフトを摘出し、上記1.で示された内弾性板等の動脈構造の保持の有無を中心に組織学的に評価検討する。
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