研究課題/領域番号 |
17H04292
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
伊藤 学 佐賀大学, 医学部, 助教 (50555084)
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研究分担者 |
木塚 貴浩 佐賀大学, 医学部, 医員 (20796487)
迎 洋輔 佐賀大学, 医学部, 助教 (90746570)
古川 浩二郎 佐賀大学, 医学部, 客員研究員 (90264176)
荒井 健一 佐賀大学, 医学部, 特任助教 (40752960)
中山 功一 佐賀大学, 医学部, 特任教授 (50420609)
野出 孝一 佐賀大学, 医学部, 教授 (80359950)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 組織工学 / 幹細胞技術 / バイオ3Dプリンタ / 血管再生 |
研究実績の概要 |
外来異物を用いて作成した血管は、抗血栓性、抗感染性の面で、自己血管より劣るのは周知であり、未だ冠動脈バイパスに臨床応用できる口径3mm以下の小口径人工血管は存在しない。我々は3次元培養での細胞凝集塊=スフェロイドを一つの単位として、細胞のみで任意の立体構造体を構築する組織工学技術を用いた血管再生の研究を進めてきた。まず血管組織型スフェロイドの最適化に向けて、iPS-ECs(ヒトiPS由来内皮細胞)とHDFB(ヒト皮膚線維芽細胞)の混合型スフェロイドを作成し、共焦点レーザー顕微鏡で内皮細胞の分布を観察した。スフェロイドはあらかじめiPS-ECとHDFBをCell tracker violetで染色し、固定後に組織を透明化することで中心まで共焦点レーザー顕微鏡での観察が可能であった。スフェロイド内で一部中心から外側へと内皮細胞が遊走する所見を認め、また、内皮細胞を混合させるタイミングや手法により異なった細胞の挙動が観察された。これらの所見は組織の大型化の際の中心部への血流維持や壊死の予防のみならず、ヒトiPS由来内皮細胞の特性、挙動を把握する上で重要な結果と考えられた。また血管様構造体の作製においては、線維芽細胞を主体とする構造体をバイオリアクターで成熟させることで、ヒト正常血圧の10倍以上の力学的強度(圧力破砕試験)を確認し、大動物実験において1か月以上の血流開存を得た。今後さらに血管組織型スフェロイドの最適化や血管様構造体の構築法、成熟方法を確立することで、移植後のより長期的な検証へと発展させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS由来血管内皮細胞を用いて血管組織型スフェロイドを作製し、組織内での血管内皮細胞の挙動を確認した。細胞凝集現象は我々の組織工学の基盤となるものであり、細胞種や細胞比率に限らず培地成分などの条件設定により、目的とする構造体に応じてスフェロイドの最適化が可能であると考えている。線維芽細胞を主体とする構造体では、改良を加えたバイオリアクターにより成熟させることで、ヒト正常血圧の10倍以上の力学的強度(圧力破砕試験)を有する血管様構造体の作製、及び大動物への短期移植実験に成功しており概ね順調に経過していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえ、冠動脈バイパス術に用いるグラフトとして適正な血管組織型スフェロイドの条件(細胞ソース、細胞配合率、培養期間)を絞りたい。また血管様構造体の構築法、及びバイオリアクターを用いた成熟法の改良を引き続き行い、移植グラフトとして適正な強度、機能をもった構造体を作製し、移植後のより長期的な検証へと発展させたい。
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