研究課題
近年、肺気腫をはじめとする閉塞性換気障害の患者は増加しており、慢性閉塞性肺疾患(COPD) は全世界の死亡原因の第3位になる。したがってCOPDの新たな治療法の開発は急務であり、今回COPDに対する幹細胞治療を用いた肺再生医療を考案することを目的とした。エラスターゼ吸入によるCOPD誘導マウスに対して、健常なマウスより脂肪幹細胞ADSCを分取し経静脈的に投与すると、移植細胞は障害肺へ集積した。肺機能解析には、組織学的解析に加え小動物プレチスモグラフィや超偏極129XeMRIを用い、それぞれCOPDを改善させることを明らかにした。ADSC投与により肺内のHGF、SDF-1の発現が高くなり肺再生に関与することを示し、さらに免疫染色やフローサイトメトリーによる細胞ソートにより移植細胞のII型肺胞上皮(ATII)マーカー発現を確認し、ADSCの一部がATIIへ分化すること確認した。またADSCは、ブレオマイシンによる肺線維症モデルマウスやリポポリサッカライド(LPS)による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)マウスモデルでも傷害肺に集積し、同様のメカニズムで肺組織修復に関与することを示した。以上より、ADSCが損傷した肺胞細胞の新たな細胞供給源となり、肺再生の新たなメカニズムの一つになりえると考えられた。人工多能性幹細胞iPS細胞に関して、様々な成長因子を用いて肺胞上皮細胞への分化誘導法を検討した。分化誘導した細胞を標識して、上記と同様に肺障害マウスへの移植を施行し、肺胞への生着および呼吸機能が改善することを示した。ただし、iPS細胞からII型肺胞上皮への分化誘導法はいまだ確立されたものではなく、細胞移植の安全性を担保するためにBRD4インヒビターによる未分化細胞の除去法の有用性を示した。肺の再生医療を考案する上で、脂肪幹細胞やiPS細胞が重要なツールになり得ると考えらえた。
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BIO Clinica 幹細胞治療と疾患
巻: 35 ページ: 60-63
Stem Cells Int.
巻: - ページ: 5179172
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