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2018 年度 実績報告書

人工癌幹細胞技術を用いた肺腺癌浸潤部位形成のメカニズムとその制御法の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17H04297
研究機関神戸大学

研究代表者

眞庭 謙昌  神戸大学, 医学研究科, 教授 (50362778)

研究分担者 青井 貴之  神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (00546997)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード肺癌 / 発生・分化 / バイオテクノロジー / トランスレーショナルリサーチ / 癌幹細胞
研究実績の概要

[目的] K-ras変異陽性の原発性肺腺癌細胞株であるA549細胞に、特定の因子の導入することにより、癌幹細胞性を有する細胞の誘導を行う。誘導された細胞を用いて、肺腺癌の浸潤部位形成と伸展機序を解明する。
[方法] レトロウイルスベクターを用いて、A549細胞に体細胞初期化因子(OCT 3/4, SOX2, KLF4)の導入を行い肺癌幹細胞様の細胞(induced Lung cancer stem like cell; iLCSC)を誘導する。そして、iLCSCと元のA549細胞を、それぞれ免疫不全マウスの皮下に1.0×106個ずつ注入し、腫瘍形成能を比較した。肺腺癌切除検体を用いて、IL-6mRNAに対するin situ hybridizationと上皮系マーカーであるCAM5.2を2重染色することにより、 肺腺癌切除検体内にIL-6mRNA陽性腫瘍細胞が存在しているのかを調べた。
[結果] 体細胞初期化因子を導入したA549細胞において、遺伝子導入後10日~15日目に核/細胞質比の高い小型の細胞からなるコロニーを認めた(iLCSC)。In vivoにおける腫瘍形成能は、A549細胞よりもiLCSCにおいて有意に高かった。腫瘍の病理像は、両者で明らかな差を認めなかった。肺腺癌切除検体においてIL-6 mRNAのin situ hybridizationとCAM5.2で2重染色したところ、CAM5.2陽性IL-6mRNA陽性の腫瘍細胞の存在を確認した。
[結論] iLCSCはA549細胞と比較して、in vivoの系において、腫瘍形成能が高く、癌幹細胞性が高かった。またIL-6mRNA陽性肺線癌細胞は、肺腺癌臨床検体において存在することが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

我々は、これまでの研究からA549細胞にOCT3/4, SOX2, KLF4を遺伝子導入することによってiLCSCが誘導でき、周囲の間葉系幹細胞と共に組織構築する能力が元のA549細胞に比べて、高くなることを明らかにした。さらに、IL-6シグナルの抑制は、従来の抗がん剤の効果を高めることが明らかにした。IL-6は、たばこの煙に反応してヒト肺胞上皮細胞において、発現が上昇する遺伝子として報告されており、また発癌への関与も示唆されている。 今年度の研究から、iLCSCはin vivoにおいて腫瘍形成能が高いことを明らかにした。iLCSCの癌幹細胞性の高さを示す結果であると考えられる。また肺癌切除臨床検体を用いて、IL-6陽性の肺腺癌細胞が存在することを明らかにした。以上により、IL-6シグナルの阻害が、肺癌幹細胞をターゲットにした治療法として、臨床応用可能であることが示唆された。

今後の研究の推進方策

本研究で用いた肺癌オルガノイドの系を用いることにより、肺癌幹細胞とその周囲間質細胞をターゲットにした薬剤スクリーニングが可能となる。従来の抗癌剤の感受性評価の方法として、in vivoで免疫不全マウスに対するゼノグラフトを用いた手法が頻用されている。しかし、この手法はわずか数種類の薬剤やその組み合わせによる効果を検討するにも、膨大な時間と労力を有する。本アッセイを用いることにより、より効率的な手法による多数の薬剤のスクリーニングが可能になると考えられる。我々は、本アッセイを用いてIL-6の遮断が肺癌幹細胞をターゲットにした治療になりうることを明らかにしているが、他の新規治療薬発見にもつながるのではないかと考えられ、これを検討する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Critical role of the Ror-family of receptor tyrosine kinases in invasion and proliferation of malignant pleural mesothelioma cells2018

    • 著者名/発表者名
      Saji Takeshi、Nishita Michiru、Ogawa Hiroyuki、Doi Takefumi、Sakai Yasuhiro、Maniwa Yoshimasa、Minami Yasuhiro
    • 雑誌名

      Genes to Cells

      巻: 23 ページ: 606~613

    • DOI

      10.1111/gtc.12599

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2019-12-27  

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