研究課題
三つのテーマについて研究を遂行した。テーマA) 早期の肺腫瘍増大速度に影響する遺伝子の同定:肺腺腫を経て形成した肺腺がん手術検体のCT画像陰影径データを用い、継時的な腫瘍体積変動をグラフ化し、各例の腫瘍増大速度を算出し、摘出標本のKi67染色をもとに増殖細胞の割合を算出した。当該検体のKi67染色割合は一般的な肺腺がんよりも低く、一般的な肺腺がんと比べて増殖が遅いことを裏付けた。ドライバーがん遺伝子やTP53の変異は生じており、それらは増殖速度と関連しなかった。テーマB) 早期がん形成を担う変異シグネチャーの同定:上皮内がんとStage I-IIIA肺腺がんの解析の変異シグネチャーの比較解析を行い、上皮内がんでは、喫煙に関連したシグネチャーが低頻度であり、非喫煙者肺がんで見られる変異シグネチャーの割合が高いことを見出した。よって、非喫煙者での変異原となるDNAアダクトの形成が早期がん形成を担うと結論付け、その実態の解明が次の課題となると考えられた。テーマC) 早期がん形成に関わるドライバー遺伝子、併発するがん関連遺伝子の同定:一般肺腺がんと上皮内がんの遺伝子変異の比較の結果、上皮内がんではTP53やクロマチン制御遺伝子の変異割合が低いことが明らかにされた。TP53遺伝子の失活はがん細胞の浸潤能の増大に寄与する一方、クロマチン制御遺伝子の異常は、細胞の分化異常を引き起こすとともに、細胞内の抗酸化ストレス状態を変化させ、ゲノム異常のさらなる蓄積やがん遺伝子ストレスへの耐性化への関与が示唆される。よって、早期がんでは、がん遺伝子の活性化によるinitiationは生じているものの、浸潤やさらなるゲノム異常の蓄積、がん遺伝子ストレスへの対応が十分でない状態であることが明らかにされた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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