研究課題/領域番号 |
17H04299
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 竜太 東北大学, 大学病院, 助教 (10400243)
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研究分担者 |
冨永 悌二 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00217548)
宇留野 晃 東北大学, 大学病院, 講師 (90396474)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳内薬物動態 / 薬剤送達 / 中枢神経系 / Chemical Surgery / 超音波併用薬剤送達 |
研究実績の概要 |
1.投与薬剤の代謝経路解明 ラジオアイソトープ(RI)標識を行った薬剤(塩酸ニムスチン)をラット脳内に投与しオートラジオグラフィーにより薬剤の可視化を行った。投与直後、1時間後、2時間後、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、96時間後、168時間後、336時間後に画像確認を行った。投与後、膀胱,大腸内容物及び皮膚にわずかに放射能が認められたが、48時間後以後はいずれの組織にも放射能が認められなかった。投与局所(脳内)では塩酸ニムスチンは投与直後脳内に拡がりその後、96時間までは投与部位(脳内)に放射能を確認した。以上の結果より,投与部位から体内へ分布した放射能は速やかに尿中,消化管中へ排泄されることが確認でき、薬剤は投与部位に薬剤は96時間程度留まるが、それ以外は体内へ分布した後に速やかに尿中,消化管中へ排泄されると推察された。今後、画像データをより詳細に解析し、得られた結果をより詳細に解析し、また質量分析によるデータと比較検討し代謝経路を解明を試みる。 2.生体内での薬物動態の可視化 薬剤局所投与後、T2mapを撮影することで可視化できる可能性を確認し、今後、臨床症例で実用化を検討する方針とした。 3.新規超音波送達システムを用いる際の超音波が脳に与える影響の解明 超音波送達システムを実際の脳内投与に用いる際に、超音波がどの様に伝搬、減衰しているか確認するために、水中で機器使用時に発生する超音波の振動について評価した。針に沿って超音波強度が正弦波曲線状に分布し針先から離れるほど徐々に減衰している事を確認した。この結果は有限要素法によるコンピュータシミュレーションとほぼ同様の結果を示していた。この事からシミュレーションにより超音波の伝搬、減衰をあらかじめ検討する事が可能と考えられる。データの蓄積を進めて実測データとシミュレーションの比較検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.投与薬剤の代謝経路解明に関しては薬剤代謝産物の動態の追跡はできている状況となっており、今後はより詳細な解析を行う段階となっている。また、2.生体内での薬剤動態の可視化に関しては、薬剤分布を確認する方法として有望なMRIシークエンスが同定でき、実臨床でその有用性を検討する段階となった。さらに、3.新規超音波送達システムを用いる際の超音波が脳に与える影響の解明については、平成30年度の開始を予定していたが、平成29年度から実施しており、仮説としていたコンピュータシミュレーションとの類似性が確認され、必要となるデータの取得が行われている状況となっているため概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.投与薬剤の代謝経路解明 前年度から継続し、質量分析法を用いて薬剤代謝産物の動態を追跡するための手法を構築しその後、質量分析により薬物動態の可視化を行いRI標識による投与薬剤の代謝経路と比較検討する。また、質量分析を用いて薬剤の剤形による脳内の薬剤拡散、代謝の違いを解明する。 2.生体内での薬剤動態の可視化:MRI撮像技術の開発 薬剤投与を可視化するMRI撮像技術の開発を行い薬剤分布、クリアランスの生体でのモニタリング法開発を目指し候補となるMRIシークエンスはT2WI, DWIである。T2map, ADCなどありそれぞれの適応性を確認する。 3.新規超音波送達システムを用いる際の超音波が脳に与える影響の解明 この機器を実際の脳内投与に用いる際には超音波が脳に与える影響を解明するため超音波条件と脳損傷の相関を検討する。前年度に得た針先の水中における振動の伝搬、減衰のデータを解析し、広範囲における振動の伝搬、減衰をシミュレーションと比較検討する。
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