研究課題/領域番号 |
17H04302
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 淳 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (10270779)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 神経再生 |
研究実績の概要 |
脳血管疾患の患者数は100万人を超え、その後遺症による運動麻痺は要介護原因の1位を占める。その他、頭部外傷や筋萎縮性側索後遺症(ALS)など皮質脊髄路を形成する大脳運動ニューロンの障害のために非可逆的な運動機能低下に陥る患者は多く、患者福祉はもちろん医療経済的にもその治療法開発は急務である。本研究では、細胞移植と遺伝子治療の相乗効果により皮質脊髄路を再構築し、運動機能低下に対する再生医療技術の確立を目指す。 これらの背景に基づき、達成目標は、①ヒトiPS細胞由来大脳運動ニューロンの移植による皮質脊髄路の再構築、②遺伝子治療によるホスト脳環境の至適化であり、③これらの組み合わせによる相乗効果を目指す。この成果は脳血管障害患者の症状改善だけでなく、全ての脳機能障害患者の症状改善に対する本質的かつ革新的治療アプローチとなる可能性を含んでいる。 平成29年度はヒト多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞)からの大脳ニューロン誘導に取り組んだ。TGF/Actibin阻害薬とWnt阻害薬を同時に作用させることにより神経誘導を促し(SFEBq法)、大脳オルガノイドを形成させることにより、初期大脳の層状構造形成が確認された。大脳第5層のマーカーであるCtip2も発現しており、将来の運動ニューロンも含まれていることが予想される。今後は脳内移植によって生着や軸索伸展を解析する予定である。 また、Ctip2ノックインマウスES細胞を作製し、大脳ニューロン誘導途中のCtip2が発現してくる段階でCtip2陽性細胞と陰性細胞の遺伝子発現プロファイル比較を行い、Ctip2陽性細胞で高く発現している細胞表面タンパクを複数同定した。大脳運動ニューロン前駆細胞の選別に繋がるような特異的マーカーの同定を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト多能性幹細胞からの大脳ニューロン誘導と大脳皮質運動ニューロン表面マーカー同定を目標としているが、どちらもおおむね達成でき、前者についてはすでに論文投稿済みで、後者についても論文投稿準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
大脳オルガノイドについては、今後脳内移植を行い、細胞生着や軸索伸展について解析する。また、その生着や軸索伸展に影響を与える因子や条件について検討を行う。それらが同定できれば、遺伝子治療的アプローチも含めて、移植細胞の機能を高めるための脳環境至適化方法を開発する。 また、軸索伸展を解析するのみではなく、行動改善の有無についても定量的に解析する。
|