研究課題/領域番号 |
17H04303
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊達 勲 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70236785)
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研究分担者 |
市川 智継 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10362964)
黒住 和彦 岡山大学, 大学病院, 講師 (20509608)
道上 宏之 岡山大学, 中性子医療研究センター, 准教授 (20572499)
安原 隆雄 岡山大学, 大学病院, 助教 (50457214)
亀田 雅博 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (50586427)
菱川 朋人 岡山大学, 大学病院, 助教 (60509610)
田尻 直輝 吉備国際大学, 心理学部, 准教授 (80782119)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | うつ症状 / 細胞療法 / 神経新生 / 電気刺激 / 脳虚血 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、当初の予定通りの研究が進んだと言える。まず、うつ病モデルラットとしてWistar Kyoto rat(WKY)を本研究では用いた。WKYにおいて、うつ症状を行動学的に健常ラット (Wistar rat: WY) と比較して確認した。続いて、BrdU (bromodeoxyuridine) の腹腔内投与を用いて、神経新生の程度を両群において比較した。WKYでは、有意に海馬の神経新生が抑制されていて、これはうつ症状に関連があると示された (Kin K et al. Behav Brain Res 2017)。続いて、WKYに対する、一過性中大脳動脈閉塞による脳梗塞作製を行った。過去の文献から、WKYには虚血耐性があることが報告されており、なかなか均一な脳梗塞が誘導されなかったが、WKYにおいて、脳梗塞後、うつ症状が悪化することが示された。ただ、150分、180分、210分と虚血時間を延ばすと梗塞範囲が拡大するものの、死亡率も高くなるため、研究の遂行が困難であると判断し、現在、WKYに対する両側頚動脈結紮による低灌流モデルを作製し、研究を行っている。一部うつ症状の悪化が示されている。パーキンソン病に対しては、新しい電気刺激システムを用いて脊髄刺激・迷走神経刺激を行っていて、行動学的・組織学的検討を行っている。刺激条件の設定が極めて重要であり、現在、最適化された刺激条件をそれぞれ脊髄刺激・迷走神経刺激において、設定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病モデル動物として、WKYを用いて、行動学的・組織学的に、うつ症状と神経新生の関係を明らかにして、論文化することもできた。また、WKYを用いた脳梗塞モデルとして一過性中大脳動脈閉塞を用いて、一定の結果は得られたが、死亡率の高さから研究計画を変更することになったが、過去文献では明らかにされていないことであり、比較的短期間に軌道修正ができたと考える。一方で、パーキンソン病モデルラットに対する、新しいシステムを用いた電気刺激治療の研究では、適切な刺激条件をおよそ再設定することができて、行動学的・組織学的評価によるデータが得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
・うつ病モデルラットしてのWKYに対する細胞移植を行う。これは、当初の予定通り、カプセル化細胞・非カプセル化細胞の移植を行うことにより、その治療効果に差異が生じるかどうかも検討する。細胞療法がなぜ有効であるのか、組織置換・組織新生だけでは説明がつかない部分、すなわち栄養効果や免疫変調効果について検討を進めることで、中枢神経系疾患に対する細胞療法の意味を明らかにする端緒になるかもしれない。 ・両側頚動脈閉塞による虚血では、WKYの死亡率は極めて低く、信頼できるデータが得られつつあり、行動学的・組織学的検討を行い、うつ症状と神経新生の研究を脳虚血と絡めて進めていくことができる。 ・パーキンソン病モデルラットに対する電気刺激による、神経新生・うつ症状を行動学的・組織学的評価とあわせて解析することにより、電気刺激治療のさらなる可能性を明らかにできると考えている。 引き続き、当初の予定通り研究を進めていく。
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