研究課題/領域番号 |
17H04309
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 雅彦 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (40374368)
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研究分担者 |
須田 廣美 (木村―須田) 公立千歳科学技術大学, 理工学部, 教授 (00574857)
古川 潤一 北海道大学, 医学研究院, 特任准教授 (30374193)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 免疫受容体 / シグレック15 / 骨吸収抑制剤 / ステロイド |
研究実績の概要 |
骨量減少と骨質異常を呈する代表的な二次性骨粗鬆症であるステロイド性骨粗鬆症に対する治療効果をモデルマウス、モデルラットを用いて検証した.C57BL6をバックグラウンドとする免疫受容体IGLR群のノックアウトマウスにグルココルチコイドを投与すると破骨細胞は増加するが、ヒトとは異なり骨芽細胞の活性も上昇した。多核破骨細胞増加を抑制できたのはDAP12関連IgLRの中でシグレック15だけであった。すなわち、ステロイド性骨粗鬆症に対して治療効果を発揮できる可能性がある治療ターゲットとしてのIgLRはシグレック15だけと考えられた。しかし、C57BL6マウスのグルココルチコイドに対する骨芽細胞の反応はヒトでみられる骨形成の低下を反映しないことから、この系ではグルココルチコイドによる骨量減少は認められなかった。計画ではIgLR中和抗体を用いた実験はSwiss Wbsterマウス系統を用いる予定であったが、より解析に適したラットモデルを用いた。ラットでもグルココルチコイドに対する骨代謝の反応はヒトと異なるものが多かったため、比較的ヒトと似た反応を示すLEW/CrlCrljラットを用いた。マウス実験で有望と考えられたシグレック15をターゲットとした中和抗体を用いてラットステロイド性骨粗鬆症モデルを用いて骨粗鬆症予防効果を検証した。このラットモデルではヒトと類似した骨吸収の亢進と骨形成の低下がみられた。このモデルにビスフォスフォネートを投与すると破骨細胞形成は著明に抑制されたが骨形成もさらに低下するため骨量増加効果は軽度にとどまった。一方、抗シグレック15中和抗体を投与すると多核破骨細胞形成が抑制されたが、骨形成のさらなら低下はきたさなかった。すなわち、既存骨吸収薬よりも効果的にステロイド性骨粗鬆症を治療できる可能性が示唆された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年に起こった北海道胆振東部地震に伴う長期停電により冷凍、冷蔵保存されていた多くの研究試料が失われ、2019年度は大幅な研究計画の変更を余儀なくされた。最終的な結論をえるために高価な試薬の再購入を必要とする関節炎モデルは断念し、卵巣摘出閉経後骨粗鬆症モデルとステロイド性骨粗鬆症モデル、転移性骨腫瘍モデルに限定してIgLRが各病態で治療ターゲットとなりうるかについての検討を進めている。これらのモデルを用いた実験はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年は、結論が得られる目処のついたテーマにエフォートを集中し論文として研究成果をまとめることを目指す(研究総括)。卵巣摘出閉経後骨粗鬆症モデルについてはDAP12関連IgLRの中でシグレック15のみが有効な治療ターゲットであることを報告する。ステロイド性骨粗鬆症に対するシグレック15療法の効果については既存の骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート製剤との効果の違いを詳細に調査し、研究成果として公表することを目指す。骨量の変化や骨微細構造の変化だけでなく、骨基質の材質変化もフーリエ変換赤外分光イメージングなどの手法を用いて解析し、結論をより強固にする。シグレック15, MDL-1のリガンドとして破骨細胞の分化制御に関わる糖鎖およびその糖鎖が結合するタンパクの最終的な同定は研究期間中には難しい可能性があるが、重要な治療ターゲットとなる可能性があることから絞り込みをすすめる。 骨粗鬆症の治療ターゲットとして有用と考えられるシグレック15についてはとくにその作用メカニズムについても調査をすすめ、治療ターゲットとしての根拠を確実にする。リガンドが確実にはわかっていないため、RNAseqなどのジーンオントロジーなどの手法を用いて破骨細胞分化においてどのようや機序に関与しているのかを明らかにする予定である。
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