研究課題/領域番号 |
17H04310
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 琢 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (30456107)
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研究分担者 |
小林 寛 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20407951)
張 成虎 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (80780551)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 整形外科学 / 骨・軟骨代謝学 |
研究実績の概要 |
まず最表層細胞、中間層・深層細胞のサブセット解析として、Prg4-GFP-CreERT2マウスの膝関節からコラゲナーゼ、トリプシンなどのタンパク分解酵素処理を組み合わせ、初代培養細胞を採取し、FACS(fluorescence activated cell sorting)にてPrg4陽性、陰性の細胞に分離した。次にPrg4陽性細胞群についてシングルセル解析を行い、複数のクラスターに分類されることは判明したが、各群でFASCに堪えうる特異的なマーカーを同定することは困難であった。その原因として、現行のシングルセル解析では発現コピー数が極端に大きい遺伝子しか検出できないことが考えられた。そこで細胞増殖能の高い細胞を選別すべく、Prg4陽性細胞を低密度播種し、複数クローンを増幅して発現解析を行い、中間層・深層細胞と比して有用性が期待できるマーカー遺伝子を3つ選出した。これらについては、次年度以降Creマウスを入手もしくは作出する計画である。また発現遺伝子の差異から、Wntシグナル、Notchシグナルのほか、NF-kappaBシグナルが最表層細胞の表現型の決定に重要であることが予想された。そこでこれらのシグナル群に関する重要分子を複数選び、それぞれのfloxマウスを入手、順次Prg4-GFP-CreERT2マウスとの交配を開始している。またin vitroでもそれぞれの遺伝子の機能解析を開始しており、最表層細胞と中間層・深層細胞の制御にどのように関係するかを、細胞増殖、未分化性の維持、成熟、肥大化など分化過程、細胞老化など現象ごとに解析を実施している最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最表層細胞、中間層・深層細胞のサブセット解析にシングルセル解析は有効ではあったが、解析する細胞の数とリード数との兼ね合いから、そのまま発現解析とマーカー探索に繋げることは困難であった。しかしながらクローナルに増殖させて解析を行うことでこの問題をクリアすることができ、ほぼ計画通りの進捗を得るに至った。
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今後の研究の推進方策 |
以下に分けて研究を推進する。 ・セルトラッキングによる関節軟骨細胞のライフサイクルの検証:初年度に同定した3つのマーカー遺伝子につき、それぞれのCreマウスを入手もしくは作成する。Rosa26-tdTomatoなどのレポーターマウスと交配させ、セルトラッキングで追跡するとともに、Rosa26-DTAマウスと交配させて細胞死を誘導し、当該細胞の機能喪失実験を行う。 ・遺伝子発現プロファイルを用いたupstream解析による関節軟骨細胞制御シグナル予測:初年度の実験結果から、遺伝子発現プロファイルでは、Wntシグナル、Notchシグナルのほか、NK-kappaBシグナルが上流制御に関わることが強く示唆された。③のCreマウス、およびこれらのシグナルのfloxマウス、あるいはトランスジェニックマウスを交配させて、それぞれのシグナルの影響について精査する。 ・候補シグナル群の層別の活性評価:現状のシングルセル解析の技術水準では、各細胞におけるマーカー遺伝子の発現レベルを定量的に判断するのは困難であることが分かったため、経験の蓄積があるレーザーマイクロダイセクション法とRNAシーケンスを合わせた解析手法を用いて詳細な解析を行う。同時に免疫染色法も駆使して組織切片上での発現の空間的広がりについても解析する。
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