研究課題
近年、microRNAがヒト全遺伝子の1/3以上のRNAを制御するエピジェネティック機構として注目されるようになり、変形性関節症の領域で重要なADAMTS遺伝子を制御するmicroRNAの働きが相次いで報告されている。一方で、microRNAは自身が作られた細胞にのみ作用するのではなく、エクソソームと呼ばれる小胞に内包されて細胞外へ分泌され、エクソソームが取り込まれた先の新たな細胞でも作用する可能性が示されている。本研究の目的は、変形性関節症で重要な働きをするADAMTSや関連分子を標的とするmicroRNAが含まれるエクソソームを分離し、microRNAを含んだエクソソームがどの様に細胞に取り込まれて機能するのかを明らかにすることでその役割を統合的に解析することである。今回、メカニカルストレスとサイトカイン刺激という二つのストレス刺激による細胞由来エクソソームの統合的解析を行った。ヒト軟骨様細胞株(OUMS-27)を用いて細胞から細胞外(すなわち培養液中)に分泌された小胞を回収した。回収した小胞について、その粒子径や表面マーカーなどからエクソソームが含まれていることを確認することができた。さらに、エクソソーム内部に含まれているmicroRNAの発現量比較をリアルタイム定量PCR法によって行った。in vitroの実験系で発現変化の大きなmicroRNAに対してRNA干渉法を用いたノックダウン実験を行った。次に、ラット膝関節に手術を施した変形性関節症モデルを作成し、膝関節液中のエクソソームを回収した。
2: おおむね順調に進展している
対象となるmicroRNAの網羅的解析を終了して、microRNAの機能解析に取り組んだ。標的となる遺伝子を同定し、microRNAの阻害配列および模倣する配列を組み込んだ実験系を構築して実施したところ、実際にその遺伝子に機能するデータを得ることが出来た。以上のことからおおむね順調に進展していると考えている。
30年度はエクソソームの取り込みに関する研究を推進する。既に候補となる経路は想定しており、予備実験では取り込みを確認済みである。今後は想定経路に対する阻害剤などを用いて、エクソソーム取り込み経路に関する解析を進めていく。さらに、エクソソームに含まれるmicroRNAがどの様に細胞へ作用するのかについての見当を進めていく方針である。そのためには細胞内部へ取り込まれたエクソソームがその後どういった挙動を示すのかを明らかにすることが重要である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 4件)
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