研究課題/領域番号 |
17H04316
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164)
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研究分担者 |
菅波 晃子 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (10527922)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨芽細胞 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
我々は最近、ヒト線維芽細胞に3つの転写因子、Osterix、c-Myc、Oct3/4の遺伝子を導入し培養することで、高い効率で骨芽細胞に直接コンヴァートさせる技術(ダイレクト・リプログラミング)を樹立した。より最近になって、ヒト線維芽細胞に外来遺伝子は導入せず、1種の化合物を添加して培養することによっても骨芽細胞へのダイレクト・リプログラミングが可能であることを報告した(ケミカル・ダイレクト・リプログラミング法)。この技術を用いれば、高齢者や基礎疾患を有する患者からでも低侵襲に採取し培養できる線維芽細胞から、移植用自家骨芽細胞を高効率で、均質かつ多量に作出することができ、さまざまな骨疾患への再生医療のための移植用細胞として用いることができると考えられる。しかしながら、臨床応用に展開するためには、そのメカニズムを解明し、また移植用の最適な骨芽細胞と3D骨組織の構成技術を創生する必要がある。そこで昨年度に引き続き、本ケミカル・ダイレクト・リプログラミング法を骨再生医療に応用するための基礎技術の確立を目指して研究を行った。AIコンビナトリアル・ケミストリーを用いた骨芽細胞のダイレクト・リプログラミングの樹立としては、TGFRに対する特異的阻害剤のin silicoでの探索を進めるとともに、化合物による骨芽細胞誘導法の向上と最適化を行い、またケミカル・ダイレクト・リプログラミングで誘導した骨芽細胞(Chemical-mediated directly converted osteoblast=cOB)のキャラクタリゼーションと機能解析を行った。また、cOBの足場として必要となる、スキャフォールドの開発とそれを用いた3D培養骨組織の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TGFRに対する特異的阻害剤のin silicoでの探索では複数の候補化合物を見出している。また3D培養骨組織の樹立では、独自開発したスキャフォールドに、遺伝子導入による直接誘導骨芽細胞を播種する検討から、骨芽細胞特異的遺伝子群を発現し石灰化骨基質を産生する立体的な培養骨組織様形状を作ることができた。このスキャフォールド上では、ヒドロキシアパタイトの結晶が一定方向に伸張するなど、興味深い性状を有しており、得られた再生骨の力学的な強度等への好ましい影響が期待できると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度には本年度の成果を集約することで、癌化する危険が低く、効果的で低コストな新しい骨再生医療の実現に向けた基盤技術として結実させることができると考えられる。
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