研究課題
基礎研究:(1)高齢敗血症ラットは対照高齢ラットと比較して有意に低い物体認知能を示した。脳内リポカリン2(LCN2)濃度を測定した結果、加齢とLPS投与が共にLCN2濃度を上昇させた。高齢敗血症ラットにおいて、認知機能に関与する海馬、大脳皮質のTNFα濃度に有意な変化は認めなかったが、皮質と海馬の2価・3価鉄イオンの存在比上昇を認めた。DFX前投与により高齢敗血症ラットの物体認知能低下がほぼ完全に抑えられた。LCN2濃度はDFX前投与の影響を受けず、LPS投与によりむしろ上昇した。さらにDFXにより大脳皮質及び海馬の2価・3価鉄イオンの存在比上昇が認められなかった。よって、高齢敗血症ラットの認知機能障害に鉄代謝異常が関与しており、DFX前投与に予防効果があることが示された。(2)高齢マウスは術後24-36時間に行動量の低下、過眠傾向を示し、空間認知能が障害されていた。海馬のプロテオミクス解析・IPAパスウェイ解析により、術後の空間認知能低下にシグナル伝達やミトコンドリア機能の異常が関わる可能性が示唆された。更にIPA上流解析により、術後せん妄の発症に神経変性疾患関連蛋白質が関与することが示唆された。臨床研究:術後全身炎症状態となる頭頚部・食道癌根治術患者73名を対象に、麻酔導入直後からICU入室翌日まで脳波解析、譫妄度評価(ICDSC)、血中炎症性マーカー(LCN2、プロカルシトニン[PCT}、プレセプシン[PSP]、CRP等)を測定した。炎症性マーカーは、譫妄群(n=22)と非譫妄群で(n=51)比較してどの時点においても有意差はなかった。α波パワー密度並びに相対的α波との相関はパワー密度でCRP、PCT、PSPで有意、相対的α波とはCRP、PSPで有意であったが、譫妄群だけで見るとパワー密度ではPSPとLCN2で相関はあったが全患者で見た場合とは異なった。相対的α波ではどのマーカーとも相関はなかった。炎症の指標となる好中球リンパ球比(NLR)は、非譫妄群で2.06に対し譫妄群は3.02と有意に譫妄群で高値だった上に、術前のNLRと導入後の相対的α波との間に有意な相関があった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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