研究課題/領域番号 |
17H04320
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山内 正憲 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00404723)
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研究分担者 |
杉野 繁一 東北大学, 大学病院, 助教 (00423765)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遷延性術後痛 / 脊髄後根神経節 / 疼痛 / トランスクリプトーム解析 |
研究実績の概要 |
われわれは初年度は慢性痛のなかでも近年,大きなトピックスとなっている遷延性術後痛に着目することにした.遷延性術後痛はこれまであまり重要視されていなかったが,予想以上に有病率が高いことが判ってきている(Br J Anaesth 2010;本邦では数万人規模とされるが疫学調査がないので詳細不明).実際,麻酔科医として術前に診察を行う際,手術歴がある患者は過去の手術創が「季節によっては痛い」「時々疼く」などと訴えていることをしばしば経験する.一方,このような遷延性術後痛の診断や治療的介入については,本邦ではあまり研究されておらず,未だ解決されていない課題である.なにより遷延性術後痛の発症や増悪の機序に関して詳細が不明であり,術後患者の生活の質を改善することができる研究成果が待望されている.術後痛の基礎研究による機序解明はBrennanらによる動物モデルの確立で飛躍的に進歩した(Pain 1996).このモデルは動物の後肢の足底を切開して縫合するものであるが,切開部の軽度の炎症を惹起するが,後根神経節の遺伝子発現プロファイルはほとんど影響を受けない(Anesthesiology 2012).したがって理想的な遷延性術後痛の動物モデルとはBrennanのモデルより創部の組織損傷が著しく強くかつ長時間炎症が継続し,後根神経節レベルや脊髄後根レベルで遺伝子やタンパクの発現変化が生じ,ニューロンの機能特性が変化するものであるはずである.遷延性術後痛は皮膚切開と筋肉組織の損傷とそれらに随伴する軽度の炎症が病理学的な機序だと推測されている.近年では皮膚切開に加え,開創器で皮膚と筋肉を一定時間牽引した,より臨床像に近い動物モデル(SMIRモデル:skin/muscle incision and retraction)が報告されている(Pain 2008).われわれはまずこのラット下肢でのSMIRモデルを作成することを試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
足底SMIRモデルの作成はすでに開始しており、すでに予備的研究データを取得している。2週間持続する機械刺激に対する知覚過敏を再現できている。
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今後の研究の推進方策 |
足底SMIRモデルの確立と疼痛関連行動実験は分担研究者の施設で継続することにする.同時に研究代表者の施設ではラットDRGを採取して,酵素で細胞を単離してNeuN抗体で免疫染色した後にFACSで分離する技術を確立する.
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