研究課題
オピオイド性鎮痛薬は有用であるが、副作用に注意が必要であり、しかも副作用の出現は患者ごとに大きく異なる。一方、近年のゲノム科学の進歩は著しく、研究代表者らは、いくつもの鎮痛薬感受性関連遺伝子多型を見出し、テーラーメイド疼痛治療を開始している。そこで本研究では、(1) オピオイド鎮痛薬副作用に関連した収集済みの2020症例のサンプルと臨床・ゲノムデータのセットおよび鎮痛薬感受性に関連した4000例以上の既存試料を解析することで、副作用脆弱性関連遺伝子多型を見出すこと、(2) 関連遺伝子多型判定を用いた、患者ごとの副作用出現を予測する数式を統計学的に構築することを目的とした。平成30年度は、がん研有明病院において研究に同意し全身麻酔手術を受けた成人患者2020例に関して、研究分担者(森野)および研究協力者(横田)がオピオイド鎮痛薬副作用(特に悪心嘔吐)などの臨床データおよび属性データを確認し、固定した。また、平成30年度までに、これらの患者のゲノムDNAの精製が完了した。さらに、平成30年度までに、上記DNA検体のうち805症例分に関して、主に研究分担者(西澤)と研究協力者(長谷川)が主にHumanOmniExpressExome v1.2 DNA Analysis BeadChipのキット (Illumina K.K.) を用いて全ゲノムジェノタイピングを行い、一塩基多型(Single nucleotide polymorphism:SNP)を中心とする90万以上のマーカー遺伝子多型の遺伝子型を判定した。本研究の成果は、副作用出現の遺伝子メカニズムの解明に繋がるとともに、テーラーメイド疼痛治療の改良に貢献するものである。
2: おおむね順調に進展している
2020症例の臨床データを確認し、解析すべきデータベースを確定させることができた。また、これらの症例のゲノムDNAの精製が完了した。さらに、DNA検体のうち予定通り805症例分に関して、全ゲノムジェノタイピングを行い、90万以上のマーカー遺伝子多型の遺伝子型を判定した。
1)候補関連多型のオピオイド鎮痛薬副作用データ付きゲノムDNA 1215症例における検証:上記805症例の臨床データ及び遺伝子多型の遺伝子型判定結果を基に、主に研究分担者(西澤)がゲノムワイド関連解析(GWAS)を行う。上記で候補関連多型となる多型に関して、残りの1215症例における臨床データとゲノムDNAを用いて、主に研究分担者(西澤)と研究協力者(長谷川、中山、江畑)が検証試験を行う。2)副作用脆弱性関連遺伝子多型の鎮痛作用感受性等との関連解析:研究代表者(池田)らは、オピオイド鎮痛薬鎮痛作用データとゲノムDNAのセット(850症例)、健常者疼痛感受性データとゲノムDNAのセット(1300症例)、鎮痛薬感受性や疼痛感受性等に関するゲノムワイド多型判定データベース(2000症例)を有している。これらの試料およびデータベースを用いて、上記で同定する副作用脆弱性関連遺伝子多型が鎮痛作用感受性や疼痛感受性などと関連するか否かを、主に研究分担者(西澤)と研究協力者(福田、林田、青木、長谷川、中山、江畑)が解析する。3)オピオイド鎮痛薬副作用予測式の構築:上記で見出される鎮痛薬副作用脆弱性関連遺伝子多型に関して、主に研究分担者(西澤)が、それぞれの染色体上の領域周囲の多型データも含めて連鎖不平衡解析を行って多型間の連鎖関係を同定し、関連遺伝子多型群を選定後、ハプロタイプ解析も行う。関連多型および上記の臨床データを基に、遺伝子検査によりオピオイド鎮痛薬副作用を予測する式をステップワイズ法により構築する。4)予測式の臨床応用と関連遺伝子多型の機能解析の計画立案:研究代表者(池田)が、上記で構築され検証される予測式の臨床応用と、上記で見出される関連遺伝子多型の機能解析の研究計画を立案し、研究成果の活用の準備を行う。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 5件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (40件) (うち国際学会 24件、 招待講演 11件) 備考 (2件)
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