研究課題/領域番号 |
17H04325
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
溝上 敦 金沢大学, 医学系, 教授 (50248580)
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研究分担者 |
後藤 享子 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50180245)
泉 浩二 金沢大学, 附属病院, 講師 (80646787)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / フラボノイド誘導体 / 去勢抵抗性前立腺癌 / Taxane系耐性前立腺癌 |
研究実績の概要 |
ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)が去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)となる機序に癌組織内の微小環境が果たす役割は不明な点が多い。本研究では、正常間質細胞と HSPC 由来間質細胞、CRPC由来間質細胞と癌細胞のクロストークの違いを明らかする。また HSPC 細胞と CRPC 細胞間のクロストークも明らかにする。さらに、我々は最近アンドロゲンシグナルの阻害、AR splicing variant (AR-V7)の阻害、増殖阻害など様々な作用を持つフラボノイド誘導体の合成に成功した。 本研究では、その作用機序を明らかにするとともに、薬剤の改良を進めてその効果を確認する。 最終的に癌組織内の微小環境をターゲットにできるかを確認し、将来的には QOL を損なうことなく、HSPC からCRPC まで幅広く治療可能な薬剤開発を進めることを目指した。 まず、HSPC細胞とCRPC細胞を共培養することによりどのような相互作用があるかを調査した。その結果、CRPC細胞は間質細胞のようにアンドロゲン生合成を促進し、HSPC細胞の増殖や、アンドロゲン応答性を高めた。また逆にHSPC細胞もCRPC細胞に影響を与えていたことから、相互作用crosstalkが存在して、前立腺癌の進行に関与する可能性があることが示唆された。 また、新たな2'-hydroxyflavanoneの30種類を超える様々な誘導体を合成し、その誘導体の抗腫瘍効果やアンドロゲン感受性阻害、AR-V7活性阻害を調査した。その結果、2種類の誘導体が低濃度でも効果を発揮することを確認した。 さらに2'-hydroxyflavanone誘導体のtaxane耐性細胞株に対する抗腫瘍効果を確認する前に、taxane耐性細胞株のcharacterizationを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、HSPC細胞とCRPC細胞が相互作用をしていることを証明できた。具体的には、HSPC細胞LNCaPをCRPC細胞DU145と共培養し、DHEAを転科すると、DHEAがDU145によりDHTに変換され、LNCaPのアンドロゲン受容体の活性を増強することを明らかにした。さらに、アンドロゲン受容体の核内移行を更新させることも明らかにした。また、LNCaPから放出される増殖因子によってCRPC細胞のPC-3やDU145の増殖が促進されることを確認した。またLNCaPからのサイトカインによって、PC-3やDU145の遊走能や浸潤能が変化することを確認したことより、HSPC細胞がAIPC細胞の進展に寄与する可能性が示唆された。 また、新たに合成された2’-hydroxyflavanone誘導体がより低濃度でAIPC細胞やHSPC細胞の増殖を阻害することを確認した。この誘導体はアンドロゲン受容体活性も阻害した。さらにアンドロゲン受容体の変異体であるAR-V7の活性を阻害することを確認した。In vivoにおいては、これらの細胞株をSCIDマウス皮下に移植してこの誘導体による抗腫瘍効果を調べたところ、明らかに抗腫瘍効果を示した。 taxane耐性細胞株のドセタキセル、カバジタキセルに対する耐性化の機序を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、低濃度でもHSPCやCRPC細胞に対して抗腫瘍効果を持ち、ARやAR-V7の活性を阻害することのできる誘導体を2剤作製することに成功した。本年度はこれら2剤がタキサン系薬剤耐性細胞株PC-3-TxR, PC-3-TxR/CxR, DU145-TxR, DU145-TxR/CxRでもin vivoで抗腫瘍効果を発揮できるか、さらに癌細胞と間質細胞、CRPC細胞間のクロストークを阻害できるかを明らかにする。これに関連して、癌細胞の遊走能や浸潤能にどのように影響を及ぼすか調査する。 さらに、これら2剤の作用機序を明らかにするために、まず、増殖に関連するタンパク質のリン酸化への影響をWestern blottingで調べる。また、cDNA microarray解析やmiRNA array解析を行うことで発現の変化する遺伝子を同定し、ターゲットとなる遺伝子を明らかにする予定である。 現在、これら2剤はin vivoにおいて腹腔内投与の経路でしか抗腫瘍効果を確認していない。これを最終的には経口薬として投与できる稼働かを確認するとともに、経口投与できない場合は、さらに構造を改変することによって経口投与して、抗腫瘍効果を観察する。
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