研究課題
本課題は卵巣癌関連腹膜中皮細胞-卵巣癌細胞の直接的クロストークが癌細胞上の各種シグナルを変化させ、化学療法抵抗性や“Stemness”の維持、腫瘍休眠と覚醒のスイッチに関与する機序を解明するものである。本年度は、L網羅解析として卵巣癌細胞の“Stemness”の維持や化学療法抵抗性を調べるため、腹膜中皮細胞と共培養した卵巣癌細胞のRNAマイクロアレイを行った。また、影響を与えた腹膜中皮細胞側の変化を網羅的に調べるため、LC-MS/MS によるプロテオーム解析を行った。同定されたメカニズムを検証するため、in vitro、in vivoモデルを用いて実験を施行した。網羅的プロテオーム解析からは、TGF-β1 の刺激により、腹膜中皮細胞上に強発現したフィブロネクチンが卵巣癌細胞のAkt シグナル活性を生み出す候補として浮上した。さらにTGF-β1刺激を行った腹膜中皮細胞上のフィブロネクチンを減少させると、共培養実験において卵巣癌細胞のAkt シグナル活性は低下し、プラチナ製剤への抵抗性が改善することが判明した。一方、TGF-β1刺激により、マウスの腹膜上にもフィブロネクチンの発現が増えることを同定し、さらに、腹膜播種のモデルとして卵巣癌細胞を腹腔内に注入したところ、TGF-β1前投与を行ったグループでの腹膜に生着した卵巣癌細胞において、Akt シグナル活性の亢進を確認した。以上の結果から、癌に関連する腹膜中皮細胞は、フィブロネクチンを介して卵巣癌細胞のAkt シグナルを活性化させることにより、プラチナ製剤への耐性を誘導する可能性をもつことが明らかとなった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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