研究課題
1.卵巣組織輸送に関する研究:摘出卵巣の恒常性を維持するための主要条件として輸送中の卵巣組織保存温度に着目し、ウシ卵巣を用いてqPCR法にて卵巣組織培養後のアポトーシスマーカーであるCaspase3の発現率を複数の温度条件下で検討した。その結果、至適温度条件は4℃となり、本結果はげっ歯類を用いた我々の先行研究(Kamoshita et al; Hum Reprod 2016)と同様であった。現在、空路での卵巣輸送も念頭に入れ、航空法に従った規格の容器を作成するための設定温度や管理方法を継続的に検証している。一方、我々は長期間に渡る凍結検体保存期間中のヒューマンエラーを防ぐため、液体窒素中でも作動可能なRFIDタグを用いた卵巣組織凍結デバイスを開発し、本成果は英文雑誌に報告した(Sato T et al: JARG, 2019)。2.凍結融解卵巣組織内の遺残耐凍剤濃度の研究:2017年に中村らは、卵巣組織凍結後の融解卵巣組織内の遺残耐凍剤濃度を測定し、ガラス化凍結法は緩慢凍結法と比較して融解直後の組織内耐凍剤濃度が高くなると報告した(Nakamura et al; Reproductive Bio Medicine Online, 2017)。しかし、中村等は融解直後の組織内耐凍剤濃度を測定しており、直後の測定は臨床現場に則さないことから、我々は融解後30分、1時間、2時間にガスクロマトグラフィーに卵巣組織凍結後の融解卵巣組織内の遺残耐凍剤濃度を測定した。その結果、培養2時間後には自然拡散により組織内遺残耐凍剤濃度が漸減しほぼゼロになった。融解卵巣組織内のアポトーシス関連遺伝子発現量もRT-PCR/q-PCRにより評価した結果、融解直後のアポトーシス関連遺伝子発現量は、緩慢凍結法とガラス化凍結法共に低値であることが確認できた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Assisted Reproduction and Genetics
巻: 36 ページ: 2251-2257
10.1007/s10815-019-01599-3