研究課題
我々は、アレルギー性鼻炎の鼻粘膜組織内において凝固系因子が亢進し、線溶系因子であるtissue plasminogen activator(t-PA)が低下していることを見出した。t-PA産生を亢進させることによりTh2環境が変化し、アレルギー性鼻炎が改善傾向に向かう可能がある。そのため気道上皮からt-PAを産生させるアゴニストを探したが、該当する物質はわからなかった。一方で、アレルギー疾患特にアトピー性皮膚炎などにおいて、腸内細菌叢の状態が病状に反映さえるとの報告がなされている。アレルギー性鼻炎においては、腸内細菌叢の報告はないが、プロバイオティクス、プレバイオティクスによるアレルギー性鼻炎症状の発現抑制、症状の改善などがメタ解析でも証明されている。そこで腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸に着目して、短鎖脂肪酸が気道上皮細胞からt-PA産生を誘導するかを検討した。その結果、①短鎖脂肪酸受容体であるG-protein-coupled receptor (GPR)41とGPR43が鼻粘膜気道上皮細胞に存在していた。②プロピオン酸、酪酸、吉草酸、酢酸の順に気道上皮細胞からt-PA産生を誘導した。③放出されたt-PAは生物学的活性を有していた。④短鎖脂肪酸によるt-PA産生誘導がGPR41とGPR43依存性であることを見出した。
3: やや遅れている
アレルギー性鼻炎において、抗原感作成立が直ちに発症にはつながらず、免疫担当細胞は不活性化状態でとどまっている。その機序として、体内の細菌叢およびそれら細菌によって食物繊維から発酵した短鎖脂肪酸が、重要な役割を果たしているのではないかと考えた。近年、短鎖脂肪酸が大腸疾患をはじめとする炎症の増悪を抑制している報告が相次いでいる。そこで腸内細菌叢及び鼻腔細菌叢を継時的に調べ、アレルギー性鼻炎に特徴的な細菌パターンを明らかにするため、倫理委員会の承認をすでに得て、マイクロバイオームを開始した。しかしなかなか便の回収に同意を得ることが難しく、症例数が上がってきていない。
短鎖脂肪酸に関してアレルギー性鼻炎の免疫担当細胞にいかなる影響を与えるのか、in vitroにて検討する。アレルギー性鼻炎患者のマイクロバイオームに関しては、研究協力金を支払うことで、症例数を増加させていく。アレルギー性鼻炎の線溶系抑制と凝固系亢進の減少をt-PA以外の因子でも証明し、それらの発現に短鎖脂肪酸がどのような影響を及ぼすのか明確にしていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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