研究課題/領域番号 |
17H04345
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
北尻 真一郎 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (00532970)
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研究分担者 |
宇佐美 真一 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (10184996)
喜多 知子 (嶋知子) 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20362519)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50397634) [辞退]
西尾 信哉 信州大学, 医学部, 特任講師 (70467166)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝性難聴 / TRIOBP / MYPT |
研究実績の概要 |
我々がヒト難聴遺伝子として同定したTRIOBP には主に3種のアイソフォーム(T1, T4, T5)があり、アイソフォーム特異的にアクチンの束化、網目構造の形成、不動毛の発生などマルチな機能を有することを見いだしている。まず、T4/5の両方が阻害されるヒト難聴に加え、T5のみが影響をうけるヒト遺伝性難聴の変異が同定された。T4/5の変異は生下時より重度難聴を引き起こすのに対してT5のみでは進行性難聴と、表現形が異なっていた。この機序を解明すべく、T5特異的KOマウスを作製した。この不動毛の根の構造解析をFIB-SEMで行った結果、T4/5 KOでは根の構造が完全に消失しているのに対して、T5特異的KOでは根が存在するものの低形成であった。根が十分に成熟していない不動毛は剛性を失っており、加齢とともに変性しヒトと同様の進行性難聴を示した。T5はcoiled-coilドメインにより多量体を形成することを見出し「T5より分子量の小さいT4のみで根は形成されるがこれは細く、成熟した太い根を形作るにはT5の多量体が必要」というモデルを提唱した。 次に、TRIOBP の解析に伴って発見したミオシンホスファターゼ調節サブユニットMYPT1,2 の遺伝子について日本人遺伝性難聴関連遺伝子データから新規変異を探索したが、現在のところ同定されていない。また、マウス内耳蝸牛のcDNAライブラリからMYPT1,2をクローニングした結果、現在報告されている複数のアイソフォームとは異なる配列のものが内耳特異的に発現している可能性が示唆された。現在、細胞株を用いたタンパク発現実験への使用にあたり、サブクローニングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の対象遺伝子として端緒となるTRIOBPに関して、アイソフォーム毎の機能をマウスモデル作製を経て成体での機能を解明した。これは聴覚生理の一端を明らかにする成果となった。また1万家系に及んだ日本人遺伝性難聴関連遺伝子データよりMYPT1,2の遺伝子について新規変異を探索したが、現在のところ同定されていない。MYPT1, 2と協働する分子に加え、難聴に関与する遺伝子・特に新規変異を同リポジトリから多く見出し、臨床所見と併せて評価を進めている。本課題を推進する上でさらなるヒト遺伝性難聴の原因遺伝子および原因変異の探索が必要であり遺伝性難聴患者からのサンプル収集は極めて順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにしたTRIOBPアイソフォーム毎の機能の違いを、さらにドメイン単位で解析を進め、MYPT1, 2を含めた協働分子との相互作用を解明する。またMYPT1, 2カスケードに関与する分子の探索を進め「TRIOBPにより規定される「不動毛の根」という場で何が起こっているのか」という大きな問いにアプローチする。 順調に構築できている日本人遺伝性難聴患者のゲノムサンプルリポジトリから、TRIOBP, MYPTに限らずTRIOBPと関連する新規難聴遺伝子・変異を同定し、これらの機能解析を進める。
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