研究実績の概要 |
B並びにC。細胞内miR34aの機能解析と細胞外分泌型miR並びにExosome含有miRの分子種解析。miR34aはp53誘導性として知られる。p53は解糖系応答を抑制し、成熟分化細胞はOXPHOS系に偏奇し、p53発現から解糖系エネルギー代謝抑制に至る経路への関与を検討した。増殖期非目的細胞では、P53によりmiR34が増強すると共に、miR34 mimicによりC-Myc CD44が減弱する。逆に言えばGuttata形成で角膜内皮細胞密度が低下している角膜内皮組織ではmiR34の減弱を介してC-Myc, CD44が増強する。miR34a-5pは培養角膜内皮細胞では細胞が増殖分化期を経て、成熟期で急激に発現量が増強する。C-MycとCD44の発現量は培養角膜内皮細胞の亜集団間で正の相関関係にあり、miR34とCD44は負の相関関係にある。c-MycとmiR34の発現も負の相関関係にある。一方、miR34とRhoAタンパク発現・RhoA活性は負の相関関係に、CD44とRhoAタンパク発現・RhoA活性は正の相関関係にあることが判明した。免疫染色の結果ではmiR34とMMP2, Bcl2, CD44発現が負の相関関係にあることも判明した。 水疱性角膜症患者の角膜内皮組織では、細胞内miR34aと共にmiR378aも低下するが、これらの細胞では、細胞老化関連経路に係るサイトカインとしてIL8, MCP1が多く分泌されると共にExosome包埋型miRとして23a-3p, 24-3p, 92b-5p, 184, 1273e, 1285-3pが多く分泌されることが判明した。この内、23a-3p, 1273e, 1285-3pは角膜内皮細胞形質の変性に関与することが判明し、「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになり、所期の目的は達成できている。23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を如何なる機序で惹起するのか、結果、miR34a, miR378の細胞内発現を抑制するのかの解明が未達事項で3年度目の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
病態をシミレーションするmiR34a, miR378低発現細胞から産生される23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を惹起することでmiR34a, miR378の細胞内発現を抑制するという増幅回路が存在するのか、23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームの遊離を惹起する分子機構がいかなるものかの解明が3年度目になる31年度の課題である。遺伝子発現の変化の網羅的検索や代謝リプログラミングへの影響、患者由来の組織を用いての変性形質の確認などが重要となる。
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