研究課題/領域番号 |
17H04353
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
坪田 一男 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40163878)
|
研究分担者 |
川島 素子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (00327610)
稲垣 絵海 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(PD) (40464903)
栗原 俊英 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (50365342)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 抗加齢医学 / Sirtuin / NAD代謝 |
研究実績の概要 |
高齢社会白書によると、40年度には本邦の2人に1人が高齢者という空前の高齢化社会を目前とし老化研究は重要課題である。なかでも眼疾患は加齢黄班変性症や緑内障をはじめ、加齢によって罹患率が大きく増大する疾患が大部分を占める。しかしながら、加齢にともなう視機能の低下の共通したメカニズムは不明な点が多い。これまでの国内外の研究では疾患ごとに治療法を開発してきたが、これからの社会を見据え加齢に共通する因子を標的として眼疾患を予防、治療する抗加齢医学のアプローチによる新規眼疾患制御法の確立が急務である。本研究では長寿遺伝子Sirtuinを標的として新しい眼疾患の予防法を構築することを目的としている。 本年度は特にSirtuinの脱アセチル化反応に基質として必要なNAD関連中間代謝産物に着目した。成果の概要としては第一に、動物モデルを用いてNAD関連中間代謝産物を経口投与し、関連する代謝産物の血中濃度を測定することでその体内動態を明らかにした。さらにこれらの代謝産物を二週間にわたり経口投与した結果、複数の臓器においてSirtuin関連遺伝子の変化やミトコンドリア関連分子の変化を認めるなど好ましい変化を予備検討の結果を得た。第二にin vitroモデルにおいてNAD関連分子不含有培地を用いた検討を行い細胞内NAD量の変化による代謝変換の影響を解析し有用な結果を得た。第三に本学倫理委員会の承認を経ておこなっている複数の眼疾患患者における臨床検体の解析についても体内のNAD関連代謝産物の濃度が、複数の眼疾患のバイオマーカーとなる予備知見の結果を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに我々が取り組んできた加齢と眼疾患の関係について新たな制御因子がいくつか明らかになってきた。初年度に見出したケトン体に関する検討から本年度はNAD関連代謝産物を介した検討に取り組んできた。NAD関連中間代謝産物は食品中に含まれる成分であり、サプリメントとしての臨床応用を含め検討を進めていきたい。またすでに構築したNAD関連代謝産物の測定系を用いて疾患バイオマーカーとしての検討など新たな研究シーズも生まれている。現在一本の論文を投稿中である他、二本の論文を投稿予定としており、順調に研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度はヒト臨床検体の解析および遺伝子改変マウスの解析を主に進める予定である。特には眼の生理的老化から疾患表現型の完成までにSirtuinの関連分子の代謝変容がどのようになっているか明らかにする。また候補代謝産物によりそれらの表現型への介入ができるか、病態改善効果の期待できうる至適投与期間を検討する。また投与後の血中濃度をはじめ組織への移行も解析し最適化を行う。次年度への予備検討もすでに着手している。
|