研究課題
小児を含む若年性がんの動物モデルとして、C3H系マウスに100%肺転移を起こす骨肉腫LM8細胞株を移植し、原発巣を切除して肺転移のみとした実験系を確立した。このモデルに対してPD1,PDL1の免疫チェックポイント阻害とOX40による免疫系賦活を同時に行う免疫療法プロトコールを導入し、プロトコールの効果を検証したところ、免疫療法群で有意な生存率の改善と、組織学的な肺転移巣の縮小を明らかにしえた。これは従来、PD1,PDL1の発現や細胞表面抗原の変異が少ないために免疫チェックポイント蛋白阻害療法の効果に疑問がもたれていた小児がんで、免疫賦活を併用することでこの免疫療法が有用であることを示した点で大きな意義があると考える。動物モデルではさらに原発巣の有無で免疫チェックポイント阻害療法の効果に差が出るか否かなど、臨床プロトコール策定の根幹に関する問題に関するトランスレーショナルな実験系の開発を進めた。一方、多くの小児がん種において臨床標本の検討を開始した。これは初発時、化学療法施行後、再発巣、転移巣など、小児がんの経過のいろいろな時点における免疫チェックポイント阻害蛋白の発現を、腫瘍細胞の幹細胞マーカー発現、腫瘍組織中の免疫系細胞数などと合わせて記録し、予後や細胞生物学的特性との関連を解析するプロジェクトであり、初年度の今年度はまだ中間解析に至っていないが、ヒト臨床検体の集積と分析が開始された。
2: おおむね順調に進展している
1.小児がん臨床検体、臨床情報の収集、循環腫瘍細胞(CTC)・微小転移細胞(DTC)の株化ならびに腫瘍幹細胞株における免疫チェックポイント蛋白の発現検索:臨床検体のリストアップならびに分析のためのIRB審査申請・承認は順調に進展しているが、CTC、DTCに関しては新鮮検体からの迅速な採取が現実的には難しい場合が多く、株化には至っていない2.既存の小児がん株からの腫瘍幹細胞の分離・培養:分離・培養は今年度は動物実験の進展で着手が遅れている3.腫瘍組織における幹細胞マーカー、免疫系細胞の検索:臨床検体、動物実験モデルで検索を進めている。初年度ではまだ中間解析には至っていない4.マウス骨肉腫高肺転移モデルにおける腫瘍幹細胞マーカー、免疫チェックポイント蛋白発現の検討:今年度、当初の予定を越えて進展し、いくつかの大きな成果が得られている
初年度に大きな進展があった動物実験については、さらに原発巣の有無による免疫チェックポイント蛋白阻害による肺転移巣の制御効果や、生存率の改善の有無を検証する。これは今後の免疫療法も加えた小児がん集学的治療における外科治療の在り方を左右する非常に重要な情報を提供するものと思われる。さらにいろいろな条件で、動物実験を継続する。臨床検体については、初年度からパラフィン切片による分析が進行しつつあるが、新鮮検体からの腫瘍幹細胞株化に関しては、新鮮検体獲得の機会が稀少であることなどから、研究の遅れが見られるため、関連の病院に協力、連携をひろく呼びかけて、検体の確保に努力する。概ね計画書の予定に沿って研究を進めてゆきたい
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