研究課題/領域番号 |
17H04356
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
越永 從道 日本大学, 医学部, 教授 (70205376)
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研究分担者 |
野崎 美和子 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10175523)
安藤 清宏 日本大学, 医学部, 兼任講師 (10455389)
瀧本 哲也 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 研究所小児がん疫学臨床研究センター, 室長 (40393178)
陳 基明 日本大学, 医学部, 准教授 (50277422)
大植 孝治 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50314315)
大喜多 肇 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (50317260)
井上 永介 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (50528338)
春田 雅之 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 研究員 (80392190)
谷ヶ崎 博 日本大学, 医学部, 准教授 (90378141)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 小児腎腫瘍 / バイオマーカー / 小児がん / 腎芽腫 |
研究実績の概要 |
日本ウィルムス腫瘍スタディグループの成績では、腎芽腫の予後は改善されていた。(Pediatr Blood Cancer 2018; 65: e27056.)。一方、海外または国内では腎芽腫の一亜型であるblastemal type腎芽腫の予後は不良であると報告があったため、すでに蓄積した腎芽腫症例を国際分類に則って再度病理診断を行った。その結果国内のblastemal typeは症例数が少なく、予後はやや不良ではあるが、生存率にはそれ以外の腎芽腫との有意差はなかった(Pediatrics International 2019[Epub ahead of print])。以上から良好な腎芽腫の解析については国内だけではなく海外諸国との共同研究が必要であると認識するに至った。そこで国際小児がん学会(SIOP)腎腫瘍研究グループとの共同研究としてUmbrella Protocolを採用することとし、わが国として国際共同研究に参加することとした。 一方、分子生物学的特徴を加え新たなリスク分類を提唱すべく検討を行った結果、染色体・遺伝子異常と予後解析を行ない、腎芽腫のrisk分類を染色体・遺伝子異常により新たに定義することができた。chr12に位置する予後良好と関連する遺伝子を同定するため、chr12増加を呈した腎芽腫とそうでない予後不良腎芽腫で発現に差がある遺伝子を網羅的発現解析により同定した(chr12: 146遺伝子)。発現データベースでは146遺伝子のうち75遺伝子が予後良好症例で高発現しており、real time PCRにてchr12に位置するKRASやCDK4遺伝子などの複数遺伝子の高発現を確認した。また、同様に予後不良と関連する16qに位置する10遺伝子が予後不良腎芽腫で発現が減少していることを明らかにした (Neoplasia 2019; 21: 117-31)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床的な小児腎腫瘍リスク分類に基づく標準治療プロトコールは、日本ウィルムス腫瘍スタディグループの結果から、概ね満足すべき成果が得られていることがわかった。特に腎腫瘍のうち腎芽腫については、予後は極めて良好であり、米国、ヨーロッパ諸国と同等またはそれ以上の成績であった。予後が極めて不良であったのは、ラブドイド腫瘍と明細胞肉腫であり、この癌腫については、国際小児がん学会(SIOP)腎腫瘍研究グループとの共同研究としてUmbrella Protocolを採用することにした。包括的研究計画書はほぼ完成している。症例登録については、日本小児がん研究グループ(JCCG)固形腫瘍観察研究のデータベースを、病理診断と画像診断にはJCCGのシステムを利用して中央管理する準備は整った。 日本人腎芽腫128症例の染色体・遺伝子異常(WT1, WTX, CTNNB1, MYCN, SIX1/2, DROSHA, DICE1RおよびDGCR8)と予後情報との解析を行ない、腎芽腫のrisk分類を染色体・遺伝子異常により次のように新たに定義することができた。Low risk群:SNP arrayにて染色体異常を呈さないSilent群およびchr12増加を呈する腎芽腫、High risk群:chr12増加を呈さず11q欠失、16q欠失またはHACE1遺伝子領域欠失している腎芽腫、Intermediate risk群:WT1遺伝子異常を呈する腎芽腫とchr12増加と同時に11q欠失、16q欠失またはHACE1遺伝子領域欠失を呈する腎芽腫。また、網羅的な発現解析から予後良好と相関するchr12に位置する遺伝子群および予後不良と相関するchr16に位置する遺伝子群を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
SIOP Umbrella Protocolに則った臨床研究を行う予定であるが、わが国の小児では保険適用外の薬用量と考えられる事項が存在するため特定臨床研究として認定臨床研究審査委員会へ提出の予定としている。予後不良腎芽腫で発現が減少している16qに位置する10遺伝子についてreal time PCRにて再現性を確かめ分子標的となりえる遺伝子を同定する。腎芽腫に対する治療成績の解析からJWiTS2-プロトコールはJWiTS1-プロトコールにくらべて患児の予後が改善されていることが明らかになった。これまでの解析ではJWiTS1-プロトコールの解析が含まれているため、JWiTS2-プロトコールのみを対象とした解析を実施する。
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