研究課題
頭蓋縫合早期癒合症には症候群性と非症候群性を併せて約60の遺伝子に原因となる 変異が報告されているが、頭蓋縫合早期癒合症全体の20%程度の症例を説明するにすぎず、また、環境要因の関与も明らかでない。病態としては、骨芽細胞の分化亢進であるが、症候群ごと、すなわち遺伝的要因が明らかになっている場合にそれぞれ特異的な表現型があることから、この分化亢進にはパターンがあると示唆される。病態推移の予測が可能になると、治療方針が立案しやすいだけでなく、新規治療の開発も行いやすくなる。そこで、遺伝的要因のみで患者を分類することが不可能であることから、骨芽細胞の遺伝子発現パターンによって頭蓋縫合早期癒合症の分類の可能性について検討することとした。一方、頭蓋冠骨の骨芽細胞は年齢とともに骨芽細胞分化能力が変化すると考えられており、患者由来の骨芽細胞間および正常骨芽細胞での骨芽細胞分化マーカーの発現パターンを比較するのは困難であると考えられる。iPS細胞は、その由来する体細胞組織に特異的なエピジェネティクス状態を維持し、それゆえ由来する元の組織の細胞へと分化しやすいことが報告されている。この特徴を利用し、患者頭蓋冠骨芽細胞を一度iPS細胞化して未分化状態へと誘導してから骨芽細胞へと再分化させる系を確立し、年齢に依存せずに遺伝子の発現パターンを比較して患者を分類することを検討している。連携医療機関にて採取した頭蓋骨手術切削片より骨芽細胞を安定的に単離する方法を確立した後、症候群性の癒合症患者由来骨芽細胞間および正常骨芽細胞での骨芽細胞分化マーカーの発現パターンの比較を行った結果、いくつかの骨芽細胞分化マーカーの発現量に群間での優位に差を認めた。また、年齢による発現量の変化も示唆された。同時に骨芽細胞由来のiPS細胞を樹立し、骨芽細胞に再分化する系を確立した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Developmental Dynamics
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