研究課題/領域番号 |
17H04358
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
鈴木 義久 滋賀医科大学, 医学部, 特任教授 (30243025)
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研究分担者 |
小島 秀人 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00225434)
石川 奈美子 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第5研究部, 主任研究員 (00462276)
寺島 智也 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40378485)
岡野 純子 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (50447968)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 大脳損傷 / 骨髄細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は脊髄損傷に対して、脊髄だけでなく大脳レベルでの障害を考慮に入れた新規治療法の開発を目的とする。昨年度は緑色蛍光色素(GFP)を発現するマウス(GFPマウス)より骨髄を得て、それを同系統正常マウスに骨髄移植した脊髄損傷モデルマウスの作成に成功した。本年度はそのモデルを用いて脊髄損傷時に脳内に移行し、運動ならびに知覚支配領域における骨髄由来細胞の役割を明らかにする。GFP陽性細胞は骨髄由来のミクログリアと考えられたことから、脊髄損傷に伴う脳内の責任病巣での炎症反応の存在が明らかになった。脳内のミクログリアは胎児期にすでに脳内に存在した幹細胞から出現するレジデントミクログリアと、成長個体でイベントごとに骨髄から遊走する特異な骨髄由来ミクログリアが存在する。そこで、脊髄損傷というイベントにより骨髄より遊走したGFP陽性ミクログリアがどのような役割を持っているのかを明らかにするために、GFP陽性細胞をLCM装置を用いて採取し、遺伝子発現状態の解析に着手した。我々のこれまでの研究から、脳内に発現するミクログリアは大きく二つに分類される。一つは、障害ニューロンに対し攻撃を仕掛けるM1ミクログリアと、もう一つは障害を修復するM2ミクログリアにである。そこで、M1ミクログリアはCD86、IL1β、IL6をマーカーとして、M2ミクログリアはCD206、IL4、IL10、Arginase1をマーカとして採取し、マイクロアレー解析を行うこととした。脳内におけるGFP陽性細胞の分布は必ずしも脊髄病変の左右差に従い脳内で病変がはっきり分かれるものではなく、脳内で両側にGFPが局在する部位も存在した。そこでM1、M2を分類した後、脳内での局在を明らかし、部位別ならびに時系列別に採取して解析を行っている。今後運動機能の改善ならびに骨髄細胞を用いた治療研究へと進めてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LCM装置を用いたGFP陽性細胞採取の結果から、GFP陽性細胞はマイクログリアであることがわかった。そこで、リアルタイムPCRを施行したところ、受傷早期の個体から採取したGFP陽性細胞はM1マイクログリアの形質が強く、受傷よりやや時間が経過した個体から採取したGFP陽性細胞はM2マイクログリアの形質が強いことがわかった。この結果は、受傷早期に脳の運動ならびに近く支配領域に遊走してきたM1マイクログリアがそのまま形質転換してM2になったのか、別の骨髄由来のマイクログリアが遊走してきたのか、という次の質問に答えることになり、今その実験に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
脊髄損傷後に大脳の運動および知覚領域に遊走する骨髄由来マイクログリアは、受傷早期はM1マイクログリアの形質を強く持つが、その後M2マイクログリアの性質を持つマイクログリアの遊走が観察された。この現象は、次の2通りの可能性がある。すなわち i)M1マイクログリアがそのまま形質転換してM2になったのか、 ii)別の骨髄由来のマイクログリアが遊走してきたのか、
ということである。i)であれば、M1とM2の中間の性質をもつ骨髄由来マイクログリアが観察されるはずだが、ii)だとその存在が否定される。これを検証するために、経時的に注意深く観察していく。
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