研究課題/領域番号 |
17H04360
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
森本 尚樹 関西医科大学, 医学部, 准教授 (40378641)
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研究分担者 |
覚道 奈津子 関西医科大学, 医学部, 講師 (00509490)
楠本 健司 関西医科大学, 医学部, 教授 (20161630)
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 巨大色素性母斑 / 高圧処理 / 不活化 / 培養表皮 |
研究実績の概要 |
申請者らは高圧処理技術を皮膚再生治療に応用し、200MPaで10分間加圧処理すれば、真皮構造は保持したまま皮膚腫瘍組織に含まれる全細胞を死滅処理できることを発見した。更に高圧処理を巨大母斑治療に臨床応用し、平成28年初頭にFirst-in-human臨床研究を開始した。本治療法は、通常破棄される患者自身の母斑組織内の細胞を死滅処理(不活化)した後に再利用し、患者自身の真皮を再建する低侵襲かつ安全性の高い新規治療法である。平成29年度に当初予定の10例の患者エントリーは終了し経過観察を行っている。 細胞の不活化に関する基礎検討では、正常細胞である表皮細胞、メラノサイト、皮膚線維芽細胞、脂肪組織由来幹細胞、腫瘍細胞として、黒色腫株細胞、扁平上皮癌細胞を用いて加圧時間を1秒、2分、10分、加圧条件を150MPa、170MPa、190MPa、200MPa、で細胞死の機序について検討した。この結果、すべての細胞は180MPaから190MPa、加圧時間10分間で死滅したが、加圧時間1秒及び2分では死滅しなかった。また、細胞胞膜構造変化(Annexin V アッセイ)及び電子顕微鏡による観察で細胞死機序を検索したが、200MPa、10分間の処理で死滅した細胞はアポトーシスよりもネクローシス機序で死滅したものが多かった。また、不活化皮膚の生着率向上に関する検討では、ラット、マウスを用いて移植手技の予備検討を行った。この結果、塩基性線維芽細胞増殖因子及び徐放性担体(コラーゲンゼラチンスポンジ)とマウス(C57BL/6)不活化皮膚を用いた移植方法が確立できたため、平成30年度はこの移植方法を用いて生着率向上を目指す検討を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究課題として、①臨床研究の患者エントリー②細胞死メカニズムの検討があったが、これら二つとも順調に進展している。また、平成30年度に実施予定の、不活化皮膚生着率向上に対する移植実験の移植手技も確立し、平成30年度の検討が問題なく開始できる状態となった。これらの状況を考えると本研究の進捗はおおむね順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究は継続しており、経過観察を行い成績の評価を行う。また、圧処理条件そのものの検討を行うための新規高圧処理機器の作成が必要になる可能性もあるが、これは今年度の研究のなかで高圧処置条件を更に明確化させる必要がある。不活化皮膚生着率向上に関しては、マウスを用いた検討を優先し、今後ブタ等の大型動物を用いた検討に移行できるかどうか検討する。
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