研究課題/領域番号 |
17H04361
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
丸藤 哲 北海道大学, 医学研究院, 名誉教授 (30125306)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心停止 / 臓器不全 / 自然免疫炎症反応 / 凝固線溶反応 |
研究実績の概要 |
研究開始事前準備の過程で、研究計画に記載した活性化プロテインC抗原量ではなく、より正確な活性化プロテインC活性の測定が、本研究の目的により良い結果を生むことが判明した。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、活性化プロテインC活性測定も臨床研究で行うこととし、活性化プロテインC活性の測定系確立準備を追加で実施する必要が生じた。この理由により研究が約3ヶ月遅延していたが、昨年度自主臨床研究審査委員会承認を得て院外心停止における自然免疫反応と凝固線溶反応連関に関する臨床研究を開始した。臨床研究開始後、後述する問題が生じたが心停止蘇生後症例登録は進み、2018年度末までに約40症例(120症例予定)を収集して検体を測定した。同時に後方視研究を進め、心停止後症候群におけるportable cardiopulmonary bypass (PCPS)431症例の血液凝固線溶動態を解析した。その結果、1)血小板、凝固線溶動態がPCPS 実施に伴い大きく変動する、2)その変動は線溶亢進型播種性血管内凝固症候群「DIC (disseminated intravascular coagulation)」の病態生理に一致する、3)線溶亢進型DIC発症は臓器不全を伴い、心停止蘇生後症例の予後に影響を与える、との結果を得た。これらの研究成果を欧州集中治療医学会で発表した。さらに、心停止の原因を循環器疾患に限定した246症例を対象にして、PCPSが症例の血液凝固線溶動態、臓器不全発症、転帰(病院転帰、神経学的予後)にどのような影響を与えるのかについて解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床研究・症例登録を開始したが、新たにヒストンH3測定に関して以下の問題が生じた。研究検体測定をLSI社に依頼していたが、同社はヒストンH3測定に対応出来ず、同検体測定を別会社であるシノテスト社が行う研究計画に変更した。検体測定の為に検体をLSI社からシノテスト社へ移送する必要があるが、変更手続きおよび移送・測定に係る手段および予算等の調整(北海道大学および2社間)に2ヶ月を要した。さらに、2018年年11月に症例集積が当初の予定より少ない事が判明した。月間症例集積数を再設定し、目標症例数達成のために症例登録期間を延長する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1)現在進行中の循環器疾患による心停止・蘇生後症候群においてPCPSが血液凝固線溶系、臓器不全発症、転帰(病院死亡および神経学的予後)に与える影響に関する解析を終了し、その結果を2020年3月の日本集中治療医学会学術集会および2020年2月の米国集中治療医学会で発表予定である。2)申請研究「自然免疫反応・凝固線溶反応の心停止蘇生後臓器不全への関与」に係る症例登録を2019年秋に終了予定とし、その後の解析を経て2020年に日本および国際学会で発表、その成果を英文論文として世界に公表予定である。
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