研究課題
敗血症性脳症は全身性反応症候群である。昏睡、せん妄、高次脳機能障害を呈し、予後が悪く、集中・救急医学領域において極めて重要な疾患の一つである。しかし、現時点では有効な積極的治療介入方法は存在しない。その理由は敗血症性脳症はびまん性の病態を呈し、炎症の本態が明らかでないことが主要因である。本研究はこの状態を少しでも前進させ、学術的に有効かつ臨床的にも適用可能な積極的治療介入方法を提案することを目的とする。最終事業年度では、これまで得られた結果の再現性及び安全性について検討した。再現性については病態誘導及び治療介入の前後におけるタンパク質群の発現変動を検討した。第一に海馬における最初期遺伝子c-fosの発現変動を治療介入刺激前後で検討し、その発現変動が起こることを見出した。第二に分子病態統合解析を研究分担者を含めた研究グループを新たに組織し、再解析を含めて再検討をおこなった。その結果、前年度の解析及び今回においても網羅解析から見出されたTF及びAcad9はそれぞれ病態刺激及びその後の治療介入において有意に発現変動し、新しいバイオマーカー候補として有用であることがわかった。さらにウェスタンブロティングによるタンパク質の発現量解析によっても同様の発現変動の結果が得られた。次に安全性について検討を加えた。安全性については以下の2点について着目した。(1)心電図。迷走神経を圧迫刺激すると迷走神経反射が起こることが知られている。この迷走神経反射が刺激によって起こるかどうか検討した。その結果、迷走神経反射は刺激の前後にて観測されず、緩やかな心拍数減少のみが観測された。(2)体温変化。体温の急激な変化が起こるかどうかを検討した。その結果、体温の急激な変化は観測されなかった。以上の結果から、本研究による非侵襲的迷走神経刺激は安全かつ敗血症性脳症の積極的治療介入に有効であることがわかった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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