研究課題/領域番号 |
17H04366
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
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研究分担者 |
下村 淳子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (00386286)
山本 格 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任教授 (30092737)
依田 浩子 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60293213)
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 准教授 (60509066)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯学 / プロテオーム / 発生・分化 / 細胞・組織 / 歯髄幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、「象牙芽細胞下層と歯髄中央部の血管周囲に前駆細胞/静的幹細胞(長期ラベル細胞:LRCs)が配置しており、歯髄の恒常性を維持している」という仮説を提唱した。本研究課題では、ドキシサイクリン(Dox)投与ですべての細胞をGFPでラベルした後、細胞分裂回数に応じて細胞ラベルが減弱するノックインマウス(TetOP-H2B-GFPマウス)を用いた。歯の損傷実験には、上顎第一臼歯の歯冠部が舌下部に移植および歯の再植実験を行った。歯髄中央部および象牙芽細胞下層の細胞は生後4週にIGFBP5/Igfbp5強陽性を示した。H2B-GFPラベル維持細胞(LRC)は歯髄中央部に加え象牙芽細胞下層に分布していた。歯の損傷後3~7日で、LRCは歯髄に維持されており、核にIGFBP5強陽性を示し、TUNEL陰性であった。RT-PCRおよびISHは歯髄におけるIgfbp5発現を確証した。以上より、IGFBP5は歯の発生および歯の損傷後の歯髄治癒過程において歯髄幹細胞の生存とアポトーシスの制御因子として重用な役割を果たすことが示唆された。最近我々は、Nestin-EGFP遺伝子改変マウスを用いて、生後の歯髄Nestin mRNAとタンパク質発現は象牙芽細胞に、GFP陽性発現は象牙芽細胞下層に限局し、象牙芽細胞下層細胞と象牙芽細胞との相違が伺われた。歯の切削後1日で損傷を受けた象牙芽細胞が変性しNestin反応を消失したが、術後3~5日にNestin陽性象牙芽細胞様細胞が歯髄・象牙質界面に配列し、修復象牙質形成を開始した。GFP陽性細胞が象牙芽細胞様細胞にコミットされており、静的状態でNestinタンパク発現が抑制されていた象牙芽細胞下層細胞が外的侵襲によりNestinタンパクを発現し象牙芽細胞様細胞に分化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TetOP-H2B-GFPマウスを用いた歯の損傷後の歯髄LRCsの動態の解析が予定通り進行している。さらに、Nestin-EGFP遺伝子改変マウスを用いて、象牙芽細胞下層の歯の損傷後の歯髄治癒過程における役割解明も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
TetOP-H2B-GFPマウスを用いた歯の再植後の歯髄LRCsの動態の解析を行う。DoxをE14~E15に一度飲ませてすべての細胞をGFPでラベルし、生後2週に歯の再植手術を行い、経時的な歯髄LRCsの系譜を術後1日~2週まで標本を採取し、歯髄LRCsの局在・蛍光強度ならびに数の変化、象牙芽細胞分化マーカーであるネスチン、IGFBP5、Gli1、Ptch1免疫組織化学・多重蛍光解析を引き続き行い、リアルタイムPCRでIGFBP5、Shhシグナルの定量解析を行う。さらに、TetOP-H2B-GFPマウスと低酸素プローブを用いた歯の再植に対する歯髄前駆細胞と静的幹細胞の活性化の違いと低酸素との関連の解析、プロテオミクスを用いた切歯形成端と臼歯歯髄タンパク質の網羅的・定量的解析を進める。
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