研究課題/領域番号 |
17H04368
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
豊澤 悟 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (30243249)
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研究分担者 |
保田 英洋 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60210259)
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (80444579)
阿部 真土 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (40448105)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨細胞 / Dmp1 / Fam20C / リン酸化 / 石灰化 |
研究実績の概要 |
細胞外基質であるDmp1は、骨芽細胞では発現せず、骨基質に埋まった骨細胞で特異的に発現する。発現したDmp1は、翻訳後修飾の過程で2つに切断され、NH2-端(N端)断片はプロテオグリカンと結合して骨小腔周囲に分布し、COOH-端(C端)断片はキナーゼ(Fam20C)によってリン酸化されて骨細管壁に分布し、骨細胞機能に関与すると考えられる。このように、N端断片とC端断片の分布と翻訳後修飾の違いから、骨細胞機能における両断片の果たす役割は異なると思われるが、その役割はよく分かっていない。 本年度は、Fam20CによるDmp1のリン酸化の意義について、Fam20C過剰発現マウスの骨格解析から検討を行い、以下の結果を得た。Fam20C過剰発現マウスの骨では、網羅的リン酸化解析により、骨基質を含む様々な分泌蛋白質のリン酸化亢進が認められた。また、Fam20C過剰発現マウスの骨組織の免疫染色では、Dmp1の分布に一致してリン酸化セリンの陽性反応が増強していたことから、本マウスの骨組織ではFam20CによるDmp1のリン酸化が亢進していることが示された。さらに、Fam20C過剰発現マウスの皮質骨では、石灰化亢進による骨形成の促進が認められた。以上から、骨細胞が産生したリン酸化Dmp1はマイナス荷電体となり、Caイオンを引き寄せる石灰化の核として骨形成に関与するという仮説を支持する結果が示された。 今後、超微構造解析により、リン酸化Dmp1の分布する骨細管壁の境界板の石灰化レベルや骨細管内のプロテオグリカンとの界面の状態を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨組織におけるDmp1のリン酸化の意義については、Fam20C過剰発現マウスの骨格解析から、順調に研究が進んでいる。一方、Dmp1の分泌経路の超微構造解析については、骨の未脱灰・超薄切片の作製と免疫染色のステップで試行錯誤の状態である。
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今後の研究の推進方策 |
Dmp1ディレーション変異体を作製し、蛍光を発色する各変異体を骨芽細胞系細胞へ導入する。蛍光発色の追跡により、その細胞内輸送経路を検討し、Dmp1のN端とC端断片の輸送シグナルの同定を検討する。また、超微構造解析により、骨細胞突起内のDmp1 C断片の輸送経路を検討すると同時に、ゲノム編集によりDmp1欠失細胞の作製を行う。
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